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―― 馮小剛・莫言 ――

 今回は中国のテレビの話です。といっても、ニュースとスポーツの中継以外、あまりテレビは観ていないので碌な話はできないのですが……。

 日本では、大晦日の夜は家族そろってNHKの『紅白歌合戦』ですね。中国でも大晦日の夜は家族そろって中央テレビ(CCTV)の『春節晩会』です。大晦日といっても中国の大晦日は、「春節」と呼ばれる旧暦の正月の大晦日です。歌あり、コメディーあり、漫才あり、手品ありのこの『春節晩会』。始まって三十年、ずっと評判がよかったのですが、ここ数年は演ずる方の「馴れ」と観る方の「飽き」が高じて、一年一年観客離れが目立っています。

 頭を痛めた中央テレビの関係者は打開策として監督陣の更迭を打ち出しました。これまでは総監督はじめほとんどの監督は中央テレビ内部の人が当たっていたのですが、来年から外部から人を招くことにしたのです。そして、総監督に選ばれたのは、日本の北海道でロケをした『ねらった恋の落し方』の監督で、中国の売れっ子映画監督・馮小剛さんでした。

 馮小剛さんは記者会見で次のように話していました。

 「こういう仕事をしたことのないわたしを選ぶとは、中央テレビの関係者の肝っ玉の大きいのには、驚きましたね。わたしは『こてんこてん』に罵しられる覚悟はできていますけど」

 「大晦日の夜は、みんながゆっくりと楽しく過ごすひととき。遊びとでもいうか、明るい見せ場がなきゃ。まあ、番組の審査にあたるお歴々、おてやわらかにお願いしますよ」


莫言

 もう一つ、テレビの話題。日本でも上映され好評だった中国映画『紅いこうりゃん』がテレビドラム化されることになりました。このベルリン国際映画祭で受賞した映画は、去年(2012年)ノーベル文学賞に輝いた中国の作家莫言さんの同じ題の小説を脚色したものですが、テレビドラマ化にあたって、莫言さんは次のように語っています。

 映画では取り上げてもらえなかったが、テレビドラマではぜひ登場させてもらいたい人物がいる。「中華民国」三十年代に実在していた人物で、わたしの故郷山東省高密県の県の役人で曹夢九という人だ。高密県の人のあいだでは今でも語り伝えられている。わたしの小説でも重要な人物として描いている。あの「中華民国」の時代に実在したあまり儒教くささのない正義感のある県長が描けるかも知れない。今日は東、明日は西と、ちょっとつかみどころのない人物だったらしいが、それなりにきちんと一つの県を運営していた。腐敗といっても、せいぜいどこかの家で酒を一杯ご馳走になるといった程度。文武両道で、いくらか野蛮なところもあったらしい。うまく描けば、ちょっと戯曲的なユーモア感がだせるかも知れない。現在の県長を連想するのもおもしろかろう。

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 まあ、大晦日の『春節晩会』にしろ、テレビドラマ『紅いこうりゃん』にしろ、なにか心がほかほかするユーモアを感じさせる場面があればいいなとあまり期待しないで期待しています。

作者のプロフィール

 李順然、中国国際放送局(北京放送)元副編集長。著書に『わたしの北京風物詩』『中国 人、文字、暮らし』『日本・第三の開国』(いずれも東京・東方書店)などがある。

紹介した内容

第五十五回 国慶節・天安門・私
第五十四回 エジソンと携帯電話
第五十三回 仲秋節
第五十二回 秋到来
第五十一回 同姓同名
第五十回 王府の今昔
第四十九回 光盤行動・低配生活
第四十八回 -禿三話-
第四十七回 交通マナー雑議
第四十六回 苦熱・溽暑
第四十五回 「雑家」の「雑文」
第四十四回 思い出のラジオ番組
第四十三回 大学受験シーズン
第四十二回 五月の色
第四十一回 ―法源寺・鑑真和上―
第四十回 北京の若葉
第三十九回 煙巻褲(イエンヂュエンクウ)
第三十八回 踏青
第三十七回 シルクロードの旅点描
第三十六回 シルクロード点描②
第三十五回 シルクロード点描①
第三十四回 春の装い
第三十三回 春を探ねて
第三十二回 擲球之戯
第三十一回 春節と餃子

第三十回 「武」という漢字
第二十九回 緑の引っ越し
第二十八回 北京っ子と風邪
第二十七回 橄欖球・水泳・羽毛球
第二十六回 足球・篮球・乒乓球
第二十五回 九九消寒図
第二十四回 北京の冬
第二十三回 衣がえ
第二十二回 落ち葉
第二十一回 老舎と菊
第二十回 中日共同世論調査をみて②
第十九回 中日共同世論調査をみて①
第十八回 天高気爽③
第十七回 天高気爽②
第十六回 秋高気爽①
第十五回 納涼④
第十四回 納涼③
第十三回 納涼②
第十二回 納涼①
第十一回 男はつらいよ
第十回 苦熱
第九回 胡主席の卓球 温首相の野球
第八回 麦の秋
第七回 柘榴花・紅一点
第六回 漢字と笑顔
第五回 五月の香り
第四回 北京の古刹法源寺
第三回 井上ひさしさん
第二回 SMAPと中国語
第一回 春天来了

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