夏の中国ではいちばん暑いといわれるトルファン(六月から八月の平均気温30度、最高気温49点6度)、このトルファンでも暑いことで知られる火焔山に行ってみました。
そうです。あの『西遊記』にも記されている火焔山です。で、経文を求めてインドに向う三蔵法師が燃えあがる焔と熱風に道をさえぎられた所、孫悟空は芭蕉扇でこの火を消し止めて手柄を立てた所です。
わたしたちは、ジープ三台に分乗して火焔山に向いました。どのジープにも西瓜が十個ぐらい積まれていました。道中の飲用水の「代替品」だそうです。
車で東に向って二時間ほど、行けども行けども砂漠、前方に赤い紅砂岩の山脈(やまなみ)が姿を見せます。史書に赤石山と記されている火焔山です。上の写真にも写されている山脈の一本一本の溝が、強い陽を浴びると燃えあがる焔のように、一本一本赤く染まって輝くのです。
一行は車を降りて砂漠に車座になって座り、火焔山を眺めながら西瓜を割って一つ一つ口に運こびました。まさに、甘露、甘露のひとときでした。
その昔、「火州」と呼ばれた暑いトルファンで二泊、ウルムチに帰る途中でちょっと涼んでいきましょうと、避暑地で知られる天池に立ち寄りました。ここは海抜1900メートル、四方をえぞ松の茂る緑の山口に囲まれ、遠くには海抜5445メートルのボコダ峰を望む汚れを寄せてけぬ澄んだ水を湛える天池と呼ばれる湖です。
前日までは、ずっと薄い白糸綿の半袖のポロシャツでしたが、それを黒の厚目のポロシャツに着替え、その上にジャンパーを羽織っても熱くない、心よい涼しさを感じたのを覚えています。
昔から、よく「オアシス、オアシス」と口にしてきましたが、「箱庭」ではない本物のオアシスにしばし身を置いて感無量でした。
(続)
|