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 第三十七回 シルクロードの旅点描

 シルクロードが東から西へ貫く新疆ウイグル自治区の旅、ここでめぐりあった人たちの誠実、情熱に溢れるあの顔、この顔がいまも深く頭に刻まれています。たくさんの写真から数枚選んでご紹介し、この点描シリーズを終ることにしましょう。

 新疆ウイグル自治区には、人口の一番多いウイグル族のほか、漢族、カザフ族、回族、蒙古族、キルギス族、シボ族、トンシャン族、タジク族、ウズベク族など四十を超える民族が仲良く暮らしています。ここで、わたしは大きなミスをしてしまいました。写真を撮るときに、どの民族ですかと聞くのを忘れてしまったのです。ウイグル族が人口の半分を占めているそうですが……。そこで以下の写真、どの民族がは省略させていただきます。いずれにしろ、新疆ウイグル自治区に住む少数民族であることは間違いありません。ちなみに、北京人民出版社出版の『中国少数民族』によると、「ウイグル」とはウイグル語で「団結」とか「連合」「仲良し」を意味するそうです。

 まず、ウルムチの市場で出会った姉妹、十六歳と十三歳だそうです。二人とも、とても澄んだ眼をしていたのが印象に残っています。

 次もウルムチで撮ったものです。婦人警官、仕事を終えて家に帰るところだそうです。写真を撮り終わって「謝々、再見」(ありがとう、さようなら)というと漢語で「再見」といってニッコリ笑い挙手の礼をしてくれました。ウイグル族だと言っていました。

 男性の彫りの深い顔も魅力的でした。カシュガルで撮ったものだと記憶しています。露天の市場の一角で「ナン」と呼ばれる饅頭のようなものを焼いていました。小麦粉かとうもろこし粉が材料でウイグル族とカザフ族の主食です。厚い鉄の鍋の上の「ナン」をじっと見つめるこの人の表情には、美味しいものを食べてもらおうという誠意が感じられました。その目はカメラを構えるわたしの方にちょっと向けられたのですが、またすぐ「ナン」に戻り一心不乱……

 同じ市場で出会った人です。ちょっとこわもて、おっかなそうな顔、でもカメラを向けると大きくうなずいてくれました。しかし表情はまったく変わりませんでした。ここに散歩か買物に来たといった感じでした。

 

 

 シルクロードの旅、歌と踊りの大海原、元気な子供たち、そこにポツン、ポツンと姿を見せるイスラム教寺院……、そんな風景に囲まれた毎日でした。

 これでシルクロードの旅点描シリーズを終ることに致しましょう。超素人の写真でごめんなさい!!

作者のプロフィール

 李順然、中国国際放送局(北京放送)元副編集長。著書に『わたしの北京風物詩』『中国 人、文字、暮らし』『日本・第三の開国』(いずれも東京・東方書店)などがある。

紹介した内容

第三十回 「武」という漢字
第二十九回 緑の引っ越し
第二十八回 北京っ子と風邪
第二十七回 橄欖球・水泳・羽毛球
第二十六回 足球・篮球・乒乓球
第二十五回 九九消寒図
第二十四回 北京の冬
第二十三回 衣がえ
第二十二回 落ち葉
第二十一回 老舎と菊
第二十回 北中日共同世論調査をみて②
第十九回 中日共同世論調査をみて①
第十八回 天高気爽③
第十七回 天高気爽②
第十六回 秋高気爽①
第十五回 納涼④
第十四回 納涼③
第十三回 納涼②
第十二回 納涼①
第十一回 男はつらいよ
第十回 苦熱
第九回 胡主席の卓球 温首相の野球
第八回 麦の秋
第七回 柘榴花・紅一点
第六回 漢字と笑顔
第五回 五月の香り
第四回 北京の古刹法源寺
第三回 井上ひさしさん
第二回 SMAPと中国語
第一回 春天来了

第三十六回 シルクロード真描②
第三十五回 シルクロード点描①
第三十四回 春の装い
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