王蕾・劉平
「同姓同名」といえば、こんなハプニングがありました。わたしの回りで起きた実話です。
知人の王徳望さんは、奥さんが出張中だったので、中学一年の娘の父兄会にはじめて出席しました。廊下で先生に「王蕾の父ですが」と言うと「あそこの教室ですよ」と教えてくれました。しばらく全般的な説明を聞いたあと、一人一人の生徒の親と先生との個別談話に入りました。王さんと先生は三、四分話しあったのですが、どうも話がチンプンカンプン。先生がはっと気付いて「一組の王蕾さんのお父さんでしょう。わたしは二組の担当なのですが……」と言いました。二組にも王蕾という生徒がいたのです。王さんはたいへん恐縮して先生に頭を下げ、あたふたと教室を出たそうです。9500万人とナンバーワンの姓「王」、それに加えて響きもよく(lei)、意味も「香りのいい花のつぼみ」とよい「蕾」は女性に人気の名の一つ、「同姓同名」が多いのも無理ありません。
もう一つ「同姓同名」のハプニング、やはりわたしの回りの実話です。知人の劉培源さんの男の子の名は「平」、平和の平で無事平穏に育ってもらいたいという願いを込めて付けたのでしょう。平君が小学三年のとき病気で入院したところ、同じ部屋に「同姓同名」の劉平君がいたそうです。すぐに隣の部屋に移され、見舞に行った劉さんはちょっとあわてたと話していました。
どうしようか
まあ以上のような事情で、一字の名は避けようという提案がときどき新聞の投書欄に出るのですが、いずれにしろ2、3種類の姓が人口の56パーセントを占めるという現状では、名を二字にしたところで問題はあまり解決されないでしょう。
父と母の姓を並べて「複姓」にしてはという提案も出ています。これには、一人っ子政策のもとで男女平等に繋がるという意見も添えられていました。
三千ほどという現在の姓の枠を破って新しい姓をどんどん開拓してはという提案もあります。これは、先祖代々伝えられてきた姓を自分の代で変えるのは、中国の道徳の根本である「孝」にたいする大反逆だという高く、厚い壁に阻まれて、なかなか実現しないでしょう。
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