以前にも、「折り折りの漢詩」というコーナーで、この詩を紹介したことがあるが、二月末となるとどうしてもこの詩の登場となる。なにか、作者が二月末の北京の胡同を散策しているような気がしてくるのだ。このころの北京の胡同散策で詠んだ拙句を二、三書き記しておこう。
老い猫が日溜まりに伏せ胡同番 春近し小枝膨らむ胡同かな 梅の香かふと足とめる胡同かな 一尺大街わしも胡同と胸を張る
*一尺大街とは筆墨、書画、古書などの老舗が並ぶ琉璃厰から北京の浅草といわれる前門に抜ける楊梅竹斜街(胡同)の一角にある長さ三十メートル足らずの北京でいちばん短い胡同だが、「一尺大街」と胸を張って名乗っている。北京っ子のユーモアが感じられる。この辺は、わたしの好きな散歩道だ。
載益のこの詩を、仏家の悟り示すものだという説もある。幸せははるか彼方ではなく、身のすぐ近くにあるというのだ。
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