「八月の北京から」で、秋はまず聴覚で感ずると書いたが、この詩でも「こおろぎの鳴き声」「芭蕉の葉を打つ雨の音」と聴覚で「目にはさやかに見えない」秋、秋近しを詠っている。秋は音がもっとも「さやかに聞こえる」季節なのかも知れない。 ちなみに、唐の詩人劉長卿は「洽洽(こうこう)たり七弦(しちげん)の上(うえ) 静(しず)かに聴(き)けば秋風(しゅうふう)寒(さむ)し」と、李白は「長安(ちょうあん)一片(いっぺん)の月(つき) 万戸(ばんこ)衣(ころも)を擣(う)つ声(こえ)」と、張継は「姑蘇(こそ)城外(じょうがい)の寒山寺(かんざんじ) 鐘声(しょうせい)客船(かくせん)に至(いた)る」……と聴覚で秋を詠っている。
|