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選者のプロフィール
 李順然、中国国際放送局(北京放送)元副編集長。著書に『わたしの北京風物詩』『中国 人、文字、暮らし』『日本・第三の開国』(いずれも東京・東方書店)などがある。
前書き
 漢詩は、ときにはわたしを励まし、ときにはわたしを慰め、ときにはわたしの心を洗い清めてくれる。訓読の訳文に加えて、素人のまったくの「遊び」だが、和漢折衷の自己流の戯れ訳を添えてみた。日本の歌人の名訳を添えた詩もある。読んでいただければ嬉しい。
選者のひとこと

 清代に書かれた北京の歳時記『燕京歳時記』には「北京の五月には石榴の花開く、鮮明なること眼を照らすばかりなり」と書かれている。ここでいう五月は、韓愈の詩の冒頭の「五月」と同じで、親歴の六月を指す。
 この石榴と夾竹桃を並べて、そのあいだに魚(ユイ)缸(ガン)(金魚を放つ陶製の大きなかめ)を置くのは、北京の夏の庭造りの一つのスタイルだ。「金(ジン)魚(ユイ)」の中国語の発音が「金(ジン)余(ユイ)」と同じで裕福に通じ、「石榴」は実が多いところから「子宝」に恵まれると縁起を担いだのだろう。その名残りか、庭のない団地住まいになってからも、部屋に盆裁の石榴と金魚鉢を置く人もいる。
 こうした縁起担ぎもあるだろうが、やはり石榴の花の紅(くれない)と葉の緑(みどり)の織りなす色のコントラストの美しさに人々が魅せられたのだろう。韓愈の詩の結句の「蒼苔(そうたい)」と「絳(こう)英(えい)」のコントラストは絶妙である。

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