太祖朱元璋から要職(戸部侍郎)を授かったが、これを固辞して故郷の蘇州に帰っていたころの作品だろう。蘇州は水の都、東洋のヴェニスといわれる風光の明媚の地、「上に天国あり、下に蘇州、杭州あり」ともいわれる。 街を縱横に走る小運河、そこに架かる美しい橋、花咲きほこる庭園、橋を渡り、花を眺め、気心知れた茶飲み友だちの隠居胡さんの家に急ぐ高啓の浮き浮きした姿がリズミカルに描かれている。 高啓の平易明快な詩は、日本でも江戸時代から広く親しまれてきた。夏目漱石も高啓の詩を愛読したという。その五絶の詩「渡り尽くす東西の水、三たび過ぐ翠柳の橋、春風吹いて断たず、春恨幾条条」には、高啓の「胡隠君を尋ねる」の影が感じられるという人もいる。
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