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 1-2日目 桂林の「市花」金木犀のお茶
       食べるお茶「打油茶」との出会い
       美人の茶人にこだわりの白茶・黒茶を聞く

 3-4日目 広西の梧州市、共通語はなんと広東語
       ようやく幻の六堡茶を飲んだ! その味は?
       山奥の茶園、茶摘みの女性たち
       六堡茶は船に乗って~「茶船古道」
       お茶の生産、昔と今

 5日目  ジャスミン茶の原産地は中国ではなかった
       茶畑から市場へ、そして工場

 中国茶の産地と言えば、皆さんは恐らくすぐにウーロン茶で知られる福建省、緑茶で有名な浙江省、プーアル茶の雲南省などを思い浮かべることでしょう。そうしたあまりにも有名な銘茶とは別に、お茶の旅の1回目は、一般にはあまり知られていないけど、実にいいものを発見した!という旅にすることにしました。 そんな主旨をお茶の指導をお願いしている中国茶流通協会の柴奇彤先生に伝えたところ、勧められたのが広西チワン族自治区でした。広東省の西に隣接する広西、何故ここなのでしょうか。柴先生に質問してみると、「六堡茶」という生まれて初めて聞く言葉が返ってきました。ええ?どんなお茶なの?と聞くと、「プーアル茶と同じく黒茶だが、長い間主に東南アジアに輸出されていて、国内ではあまり知られていない。しかし、香港や広東省を含め、東南アジアではかなり人気の高いお茶だ」などなど、との答えでした。どんなお茶だろうねっと……詳しい>>
1.金木犀(桂花)の町

 六堡茶の産地は梧州市ですが、北京からの直行便がないため、桂林市経由にしました。初秋の頃、日本語部からは取材と撮影担当の2人、それに韓国語部の1人、合わせて3人のチームでした。

 桂林の市の花は金木犀です。9月下旬の中秋節前後になると、金木犀の花が一斉に咲き乱れ、町中が甘い香りに包まれます。金木犀は中国語では「桂花」といい、桂林というのは「桂花成林」(金木犀の木が林を成して生い茂る)という意味です。そんなわけで、桂林市の至るところで、お店に「桂花茶」(金木犀茶)が置いてありました……

2.「白」と「黒」にこだわる茶人

 桂林を経由した僅かな時間を利用して、知り合いに地元の茶人(お茶関係の仕事をする人のこと)を2人紹介してもらいました。お茶の専門店を経営する覃文恵さんと覃子艶さん、どちらも女性です。

 少数民族のチワン族出身の二人は共に30代のようで、親戚関係です。二人ともにこやかで知的な感じでした。お茶の世界に入る前は、玉やマホガニーなどを楽しんでいたという文恵さんは、いまはお茶を楽しんでいる(玩茶)といいます。「お茶は玉やマホガニーと同じように、どちらも大自然からの恵みを存分に蓄えているから好き。お茶は『生きた骨董品』だ。私たちが扱っているのは、黒茶と白茶の2種類だけだが……

3.打油茶

 「知白守黒」のお店を出て、茶人二人のお勧めで、「打油茶」というお茶を使った地元の名物料理を食べに行きました。連れて行かれたのは車が行き来する道端の目立たないお店でした。道に面している壁が取りはらわれていて、店は広くないのに、開放感があって、つい入りたくなるという親近感があります。

 テーブルは普通の高さのもののほか、子供用のような低いものもありました。四角いテーブルに背もたれのない四角い椅子、どちらも木の色そのままなので、素朴な感じです。夕方5時過ぎですが、夕食の時間にはまだ早い。3人は歩道に一番近い外側のテーブルに座りましたが、隣の低いテーブルに若いカップルが座って何かを食べていました……

1.六堡茶初印象
 六堡茶は広西の名物、その名は産地である梧州市蒼梧県六堡郷に因んだものです。梧州市は、広西チワン族自治区の東部に位置し、広東省との省境の近くです。桂林から梧州まで380キロ、高速道路で5時間かかりました。店舗はいくつもあり、みな地元のお茶会社が出店しているそうです。その中の一店、茂聖という民間では一番大きい会社のお店に入りました……
 
六堡茶の動画へ
3.茶船古道
 広西に来るまでは、「茶馬古道」のほか、ここ梧州を起点とし東南アジアと結ぶ「茶船古道」も存在していたとは知りませんでした。200年ほど前から、六堡鎮と周辺の山奥に住む人々は、山で取れたお茶を簡単に加工し、川で広東省まで運び出し、さらに東南アジアの国々まで輸出していました。スタート地点は六堡鎮の合口街。そこから細い六堡河に浮かぶいかだにお茶を載せ……
2.茶園
 六堡鎮、人口は2万5000人、北回帰線のすぐ北側に位置します。年平均気温21.2℃、年間降雨量1500ミリ。大桂山脈が延びる地域にあるため、標高1000-1500メートルの場所が多く、茶の樹は、村から3キロから10キロ離れた山の麓や谷間にあります。そうした場所は日照時間が短く、一年中霧がかかっているため、茶葉の成長には最適だといいます……
4.黒茶の魅力
 六堡茶が独特な香りと円やかな風味を持つのは、実は昔の加工と運送に深く関係しています。まずは、くたびれた農家の人がその日乾燥するのに間に合わない茶葉を一晩放置したのがきっかけで、「堆積」という製法を偶然に見出したのです。一晩放置した茶葉で作ったお茶は、飛び切り円やかな風味が出るからです……
5.海のシルクロードの起点―梧州

 六堡茶を求めて訪れた梧州市は、広西チワン族自治区の東門とも呼ばれています。そのすぐ東が広東省になるからです。広西の85%の河の水がここ梧州に集まり、東の広州や香港、マカオへと流れていき、そこから海のシルクロードを通じて、遠くアラビアやアフリカにまでつながっています。そんなわけで早くも100年前の1897年には、梧州は対外貿易の埠頭として開かれ、輸出商品の中にはこの六堡茶がありました。

 梧州は広西の町でありながら、共通語は広東語です。広東語の発祥の地とも言われていますし、ここでは、朝食を大事にするなど生活習慣も広東省と同じです。ある日、豆乳が特別に美味しいお店へ案内してもらいました。朝食なのに、10種類もの様々な点心(お菓子)が出され、店は家族連れの客で満員。ここの豆乳は泉の水を使って作るため……

ジャスミン茶の伝説

 広西の東にある梧州を後にし、ジャスミン茶の産地で知られる横県に向かいました。南へ高速道路を走って4時間、道沿いに一面のジャスミン畑が広がってきました。
 実は、ジャスミンの花の原産地は中国ではなく、フィリピンです。それでは、ジャスミンの花はどのような経緯で中国に伝わり、北方地域で一番人気のジャスミン茶になったのでしょうか。いろいろある伝説の中の、こんなお話に心がひかれました。
 大昔、フィリピンのルソン島はジャスミンの花に覆われ、清々しい香りが満ち溢れる天国でした。しかし、島には、欲張りな農園主がいて、農民に惨い仕打ちをしていました。ある日、中国の福建省から明るく働き者の明という若者がやってきました。やがて、ジャスミンの花摘みをする、吉沙という美しい娘と恋に落ちてしました。吉沙は毎日のように明の寝床にジャスミンの花輪を置いて愛を示したものでした……

ジャスミン市場と工場
 横県、2100年の歴史を持つ古い町です。省都の南寧から北東に90キロ、交通の便の良い場所にあります。また、北回帰線の南、亜熱帯気候に属していて夏が長いため、日照時間が長く高温で雨が多いという、ジャスミンの成長にはぴったりの条件がそろっています。ここでは、ジャスミンの開花期が4月から10月末まで半年以上も続きます。そんなわけで、横県は徐々にジャスミン茶の生産拠点となり、全国の8割以上のジャスミン茶がここで加工されるようになったのです。
 ジャスミン畑で農民が花を摘んでいました。つぼみがふくらみ開花する寸前のものだけを摘み取ります。畑のあちこちに、すでに咲いている花も見かけますが、そういった花は香りがすでに逃げているため、使いません……
 初めての広西の旅でした。
 至るところで豊かな大地が育んだ恵みの数々を目のあたりにしてきました。お茶の旅ということで、主にお茶を中心に書き続けてきましたが、実を言いますと、自分の好みである種々の美味しい食べ物についても、もっと紹介したかったのです。梧州の亀苓膏(ゼリー状の健康食品)、涼茶(健康飲料)、竹虫(見た目のわりに美味しい料理)などなど、またの機会にその辺のお話をしたいと思います。
 蒸し暑い広西で取れる食材の数々は、そこで暮らす人々の体を労わる効果があるものばかりでした。東南アジアで幅広く飲まれている六堡茶も、同様に、一年中蒸し暑い中で体に一番優しいので人気が出たのではないでしょうか。私たちにとっては、夏の蒸し暑い時には、六堡茶を飲んで南国の大地からの恵みをじっくりと味わいたいものです。
 お茶の旅、まだまだ続きます。
関連写真
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クイズ
• 六堡茶とは?
 六堡茶は、産地が広西梧州市六堡鎮なので六堡と名付けられました。中国南北朝時代の歴史文献『桐君録』の記載によりますと、六堡茶は1500年の歴史があり、昔からとても有名なお茶です。六堡茶は中国六大茶類の黒茶に属して、発酵茶の一つです。茶葉の色は褐色で、たまに黄色い花が見られます。お茶を入れると、香りが濃く……
• 六堡茶の入れ方
 道具:随手泡(電気ポット)、茶壺・蓋碗(蓋つきの茶碗)、茶盤(大きな茶碗)、品茗杯(茶盤と似た茶碗)、茶巾、濾過網、茶荷(茶葉の置物)。お茶を入れる前に、茶葉を茶荷の中に入れて、お客に鑑賞してもらいます。これで、お茶の品質が分かりますし、お客を尊敬していることが現わせます……
• 六堡茶を選ぶ5つのポイント
 一、 茶葉の形を見る。茶葉がしっかりしていて濃い褐色でつやがあるのが高級品です。二、 茶葉の香りを嗅ぐ。香りが濃くて、ビンロウジの味がある。三、 入れたお茶を見る。色は濃く明るい赤色で、透明なほうがいい。四、 お茶を飲む。味に厚みがあって、さわやかで飲みやすい。五、 年数と値段。六堡茶は所蔵時間の長いほうが良いと言っても、別に50年のお茶……
中国茶のあれこれ
• 中国茶の産地
 中国はお茶の故郷です。中国西南部の雲南省、貴州省、四川省は世界の野生茶の原産地です。中国茶の産地は、東の台湾省から西のチベット自治区まで、南の海南省から北の山東省まで、とても広いです。主に4つの地域に分けられていて、江南茶区、江北茶区、華南茶区と西南茶区になっています。生産量は、福建省……
• 中国の六大基本茶の分類、その区別は?
 現代の中国茶は加工方法によって、基本茶と再加工茶に分けられています。お茶を加工する時、酵素の触媒作用で発酵する茶ポリフェノールの割合が違いますが、その割合によって、形成したお茶の特徴も異なり、緑茶、紅茶、ウーロン茶(青茶)、白茶、黄茶、黒茶に分けられています……
• 再加工茶類は何?
 中国の六大基本茶を原料として、再加工して製造した茶葉製品は「再加工茶類」と呼ばれています。再加工茶類は加工方法によって、花茶、緊圧茶、粋取茶、果味茶、薬用保健茶、茶飲料などに分けられています……
中国茶の名店
• 天福茗茶
 天福集団は台湾天仁集団の李瑞河社長が大陸で創立したお茶専門の会社です。現在、1003軒の「天福茗茶」チェーン店、9つの茶工場、世界始めての茶専門学校―天福茶学院があります……
• 張一元茶荘
 「お菓子は正明斎、お茶は張一元」という言葉もあります。張一元茶荘の創始者は張昌翼で、1900年北京の花市街で、「張玉元」という一軒目の茶店を開きました……
• 呉裕泰茶荘
 呉裕泰茶荘(原名:呉裕泰茶桟)は、1887年の創立で、すでに120年余の歴史があります。現在、呉裕泰茶荘は190軒のチェーン店、茶葉加工配達センター、茶文化陳列館……
お茶と養生
• 一年中、いつどんなお茶を飲めばいいか?
 中国の漢方医は、人体の機能や病気の変化は季節と気候によって変わると考えています。春は出生、夏は成長、秋は収穫、冬は貯蔵。この四季の法則によって、人体の陰陽が調和できるようになっています。
 従って、お茶での養生も同じく、四季によって違うお茶を選んだほうがいいでしょう……
• お茶は健康飲料、その原因は?
 科学研究によりますと、お茶は最も安く、最も安全で、最も栄養に富む天然飲料です。医学によりますと、お茶は、「抗癌」、「抗酸化」、「血管強化」、「虫歯防止」、「ダイエット」などの保健作用があります。茶葉には、茶ポリフェノールがたくさん含まれています。茶ポリフェノールは抗癌効果があります。また、ポリフェノールはガン細胞の増殖を阻止することができるそうです……