
目の前にこんな光景が浮かんできました。
農家の人が朝早くから茶畑に出かけ、半日かけて茶摘みをしました。昼過ぎ、家に戻ると、早速大きな釜で茶葉を炒り始めます。炒った茶葉を大きな台の上に広げ、手で輪を書くように揉んでいく。茶葉は見る見るうちに細長く丸まってくる。部屋中に青々しい香りが満ち、作業はいつまでもいつまでも続いていきそう…。気がつくと日がすでに傾いていました。もう、揉まれた茶葉を火で乾燥させる作業に移っています。日が沈み、村は暗闇に包まれる中、農家の窓だけが揺れる炎で暖かいオレンジ色に映っています。深夜になって、農家の人はとうとうくたびれて、残りのお茶は翌日の作業に回すことにして、そのまま放置して寝床に付いてしまいました。
竹で編んだ大きい籠2つ分のお茶がようやく用意できました。若旦那が天秤棒で竹篭を担ぎ、早朝家を出て、山道を半日歩いて、昼ごろ六堡鎮の合口街に着きました。茶葉を商人に売り、商人たちが外から運んできた豊富な品物の中から、妻には洋服の生地、子供たちにはきれいに包まれたお菓子などを買ってすぐに家路につきました。
一方、茶葉が入っている竹篭はそのままいかだに載せられ、長い旅路に出ます。狭い川の両側は木々が生い茂り、木陰を作っています。いかだは木陰の中に入ったり出たりしながら、下流へ流れていきます。暑い。船頭は上半身を裸にしても汗の粒が落ちてくる。いかだは川の中を障害物をよけながら器用に抜けていく。水しぶきがしきりに竹篭にかかってきては、やがて日差しで乾いていく。そんな繰り返しでした。数日後、いかだは無事に大きな河に出て、そこで竹篭が船に載せ替えられ、静かに寝かせられて海に向かっていきます。

この大きな丸い容器の中にお茶をいれて、適度な温度と湿度の中で発酵させていく
六堡茶が独特な香りと円やかな風味を持つのは、実は昔の加工と運送に深く関係しています。まずは、くたびれた農家の人がその日乾燥するのに間に合わない茶葉を一晩放置したのがきっかけで、「堆積」という製法を偶然に見出したのです。一晩放置した茶葉で作ったお茶は、飛び切り円やかな風味が出るからです。もう一つは、運送中の暑さと湿気です。ほど良い温度と湿度の中で、茶葉が発酵し、黒茶の独特の香りを醸し出していくわけです。
このような製法を元に、いまでは現代的な生産ラインが作り出されています。茂聖会社の生産ラインを見学させてもらいました。工場長を務めている郭維深さん(70歳)は、農業専門学校を卒業後、当時の国営茶会社に就職し、お茶の技術開発や生産管理に一生を捧げてきました。長年、六堡茶を飲んできたため、高コレステロールや糖尿病など年配の方によく見られる病気とは全く無縁です。特にSARSが流行した時期、地元では六堡茶を飲んで予防していたそうです。昔から、農家の人々は六堡茶を下痢や胃腸の薬として常備していたということ。

蘇淑梅社長 工場長:郭維深さん
茂聖会社の蘇淑梅社長は、様々な事業をしていましたが、そのうち、祖先が残してくれた六堡茶の魅力に目覚め、この今では最大の民間会社になった会社を立ち上げました。さすが女性の社長さん、六堡茶の中に蜂蜜を入れて飲んでいるそうです。ノンカフェインで、ダイエット効果が証明されている六堡茶の良さを、東南アジアだけでなく、国内の特に北方の人々にも知ってほしいというのが、社長の最大の願いです。
加工後のお茶はこの竹篭に入れて2年間寝かせた後、市場に出す。
この寝かせる過程は「陳化」という。加工後7-8年のものが一番美味しい。

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