第四十三回 大学受験シーズン
毎年六月に入ると、北京の新聞やテレビは大学の受験問題にスポットをあてます。毎年の六月の上旬に三日間にわたる全国統一の大学の入試がおこなわれるのです。去年は900万人以上の人が受験しています。
もともと、この統一試験は七月の上旬におこなわれていましたが、七月は北京をはじめ全国各地の一番暑い月、こんな暑いときに試験をするのは受験生にとって酷だという声が全国の教育ママからおこり、当局はいくらか涼しい六月上旬に繰りあげたのです。といっても、北京の六月の最高気温は38.9度、五月にしてはという声もおきています。
入学試験がおこなわれる三日間の北京の街は、すべてがこれに服従するといった感じです。建設現場では雑音をださないよう仕事を規制する、試験場の前には交通整理のお巡りさんが姿をみせる、テレビは天気予報の時間を増やしたり、受験生の健康管理の番組を組んだり……。
試験当日の受験場の前は見送り出迎えの父兄の人の波。試験の一週間前から受験場の近くのホテルに親子で泊まり込むという人もいます。
こうした大学受験ブームは、大きな夢に向って前進する中国に現れた競争社会の一端がうかがえる現象といえましょう。昨今では、このような競争が幼稚園から始まっているようです。よい幼稚園や小学に入れないと、最初のスタートの時点で、子供に後れをとらせることになる、これは子供たちに申し訳ないことだというのは、昨今の中国のママたちの共通の考え方らしいです。
北京で発行している日本語の月刊誌『人民中国』の二月号の「ウの目タカの目」というコーナーでこの雑誌の女性記者張雪さんが「若いママの焦り」というタイトルのエッセイで自分の例を挙げて直面している子供の教育問題を綴っていましたので、ちよって書き抜いてみましょう。張雪さんの一人息子哲君は幼稚園に通っていて、そこに設けられた英語教室の授業も受けています。
「哲のパパは満四歳になったらピアノを習わせたいと思っている。……いろいろな習いことは、どれも子供たちが望んでいることではないかも知れない。子供たちはただ子供時代を楽しく過ごしたいと思っているだけだろう。しかし、競争社会を生き抜いて行かなければならないこの子たちの将来を思うと、世間の流行を無視するわけにもいかないのである」
張雪さんの焦り、悩み、よーくわかります。わたしのまわりでも、貴方と同世代のママたちは、みな貴方と同じような焦り、悩みと格闘しながら毎日を力強く生きています。哲君に接する張雪さんご夫婦の夢が、中国の大きな夢を実現する時代の激流のなかで、十年後、二十年後に、美しい花を聞くことを心から願っています。
哲君がもう少し大きくなったら、なにかスポーツをやらせたらどうでしょうか。先日、テレビの番組でその道の権威の先生が、少年時代に身につけたスポーツは、習慣となって一生心身ともあらゆる面で役に立つと話していました。ご参考まで!
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