会員登録

~東鱗西爪~

話・はなし・噺・HANASHI 李順然

第二十回

――中日共同世論調査をみて②

 

 前回は、中日共同世論調査で相手国に良くない感情を持っている人が少なくないことに触れましたが、半世紀も中日友好の仕事をしてきた一人として、ちょっと淋しい気持ちがしました。

 だが、世論調査の当事者の一人である東京大学大学院法律政治学研究科教授の高原明生氏の話を聞いて、いくらかほっとしました。高原氏は調査結果発表の記者会見でこう語っているのです。

 「両国民は感情面で反発しあっているが、理性的には両国関係が重要だということを理解している」

 この部類に属している人の中には、国民感情がさらに悪化することを願っている人はほとんどいないでしょう、ほとんどの人が国民感情が好転するのを願っていると思います。わたしはいくらかほっとすると同時に、メディアの仕事をしている人間として、国民感情が良い方向に向って前進していくのを促すよう、常に心がけて毎日の仕事と取り組んでいかなければと強く感じるのでした。中国には「和則両利、離則両傷(和すればともに利あり、離れればともに傷つく)」という成語がありますが、中日関係はまさにその通りなのです。

 前回と今回のページで使った中日共同世論調査の資料は、日本の日中友好関係の団体が出している新聞でみたのですが、こうした新聞には、今年の夏休みを利用して進められた両国の青少年の友好交流の模様を伝える記事も目を引いていました。大新聞では、あまり取り上げられていないようなので、二、三拾ってご紹介しましょう。

 まず、北京の中国オリンピックセンターでは、中日友好交流都市中学生卓球交歓大会が開かれ、北京市―東京都、大連市―北九州市、上海市―大阪市、大阪府……などなどと中日両国の中学生の混成チーム83チームが「友好第一」をモットーに、その技を競いあい大盛況でした。

 また、同じく北京では中日韓の高校生がオリンピック広場でロックの交流を行いました。三国の高校生がボランティアとして運営にも参加したこの野外のロック交流、わかものの息吹きに溢れていました。

 次は野球で、日本の関西地区の中学生選抜チームが中国を訪れ、北京や無錫で親善試合を行いました。グランド一杯に「好球!」「ナイスボール」と明るい声が響いていました。

 また夏休みを利用しての相手国でのホームステイも盛んだったようです。このごろでは、三ケ月、半年、一年というホームステイも着実に広まっているのは嬉しいことです。遼寧省出身で、日本の秋田県立北高校にホームステイで一年通っていた王華一君も八月に故郷に帰ってきましたが、「ボクは一人っ子なのでホームステイ先で兄弟ができてとても嬉しかった。バスケットボール部の部活も楽しかった。将来は東大を目指して役に立つ外科医になりたい」と話していました……

 釣魚島問題などでとても暑かった今年の夏、中日の若者の爽やかな笑顔、笑い声は一服の清涼剤。わたしを慰め、励ましてくれました。

作者のプロフィール

 李順然、中国国際放送局(北京放送)元副編集長。著書に『わたしの北京風物詩』『中国 人、文字、暮らし』『日本・第三の開国』(いずれも東京・東方書店)などがある。

紹介した内容

☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十九回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十八回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十七回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十六回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十五回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十四回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十三回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十二回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十一回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第十回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第九回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第八回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第七回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第六回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第五回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第四回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第三回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第二回
☆ 話・はなし・噺・HANASHI~第一回

関連コラム