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イ族の村の風景 |
イ族の少女 | 中国には55の少数民族がいますが、四川省にも多くの民族が暮らしています。なかでも、四川省で最大の少数民族が「イ族」です。
今回は、四川省・涼山イ族自治州で、イ族の人々に日本語を教えている、青年海外協力隊・友貞新さんにお話をうかがいました。
友貞さんは、涼山イ族自治州の州都・西昌で、日本語教師をしています。四川省の省都・成都から西南に500キロ。電車だと10時間くらい、飛行機だと1時間ほどで着きます。
友貞さんが暮らす涼山イ族自治州は、四川省西南部の高原山地にあります。標高4000メートル以上の山々が連なる、自然の美しい地域です。涼山イ族自治州の総人口はおよそ382万人。そのうち、イ族は全体の42%にあたる162万人あまり。涼山イ族自治州は、中国のなかでも、イ族の人々が一番多く住んでいる地域です。友貞さんは、2003年から自治州の州都・西昌(せいしょう)で日本語を教えています。
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日本語の授業(中央が友貞さん) |
子供たち | <イ族はどんな民族?>
友貞さん:
「歌と踊りが大好き。お酒が大好き。一番言えるのは素朴ってこと。近代化が遅れたというか、商品経済に取り込まれたのが遅かったってのもありますが、そういう点から見ても、かなり素朴な人たちが多い。だから、一番大切なの"情"。日本語でいう情にあたるようなことを一番大切にしている人たちがイ族かなと思います。」
「漢族はお茶を尊び、イ族はお酒を尊ぶ」という言葉があるほどイ族の生活にお酒はかかせません。客人が来たら、まずはお酒でもてなすのだそうです。友貞さんも、幾度となくイ族の人々とお酒を酌み交わし、温かい交流を深めてきました。
また、美男美女が多いのだそうです。しかも、色黒が美男美女のひとつの基準になっているとか。友貞さんもよく日焼けしているので、よくイ族に間違われてしまうそうです。
<伝統的な習慣>
友貞さん:
「日本の東北地方に虫送りのお祭りがありますが、それの原型になったんじゃないかと言われているようなお祭りが、涼山の全州で行われておりまして。それが大体8月のおわり。別名"火祭り"と呼ばれておりまして、みんなが松明を持って、田んぼのほうに出かけて行き、虫を殺す。街のほうではそれを持って走り回る。」
毎年、旧暦の6月24日、涼山全州で「火祭り」が行われます。中国語では「火把節」。悪いものを焼き尽くし、暮らしの安泰を願う、イ族ではもっとも大切な伝統行事です。祭りのとき、人々は民族衣装に身を包み、祖先に祀るための牛をさばき、夜になると松明を持って歌い踊ります。
最近では、この「火祭り」を見に行く観光ツアーもあり、この時期の涼山には、国内外からの観光客が訪れます。
<イ族の食文化>
友貞さん:
「四川料理で有名なホイコーローやチンジャオロースはとてもおいしいものが食べられます。あとは、イ族の食習慣の影響を受けて、ジャガイモや、いま日本で有名になっている"にがそば(韃靼そば)"。体にいいといわれているルチンが普通のそばの100倍くらい含まれているというそのそばが、涼山の特産の一つ。あとは、人の手が入っていない山とか自然が多いので、野生のきのこがとても多くて。マツタケとか、普通ならとても高級なキノコがとても安く食べられる。日本人のお客さんが来たら、そのキノコの鍋を食べてもらうんですが、100人中100人くらい好評です。」
また、数年前からは米や蕎麦の有機栽培も始まり、中国沿岸部の大都市に向けて販売され、好評を得ています。日本の有機JAS認定も獲得しており、日本へも輸出されるほどになりました。
<中日協力職業クラス>
その素晴らしい自然環境が、涼山の宝。しかし、中国においては、貧困地域が集中している場所のひとつでもあります。特に、標高3000メートルを超える山村地域では、収入がなくて学校に行けず、仕事もない若者がたくさんいます。そのような農村の若者を支援し、自立の道を開いてあげたいと、2004年1月、「中日協力職業クラス」が発足しました。このクラスは、涼山民族中学校の中にあります。教室は中学校が提供し、日本のボランティアや企業も支援しているため、教材費や学費は無料です。日本語・コンピューター・会計・中国語の標準語である「普通話」を学ぶことが出来ます。友貞さんも、日本語教師としてこのクラスに関わっています。
朝早くから夜遅くまで勉強に励む学生たち。日本語能力検定1級合格を目指して頑張っている学生もいます。若者たちがここで学んだ日本語を生かし、上海や北京にある日系企業に就職してくれたら。友貞さんの懸命な指導は続いています。
友貞さん:
「来ていただければ、人、空気、自然、それからここで僕たちがやっていることに関して、すべて皆様に自信を持って紹介できることだと思いますので。ぜひ足を運んでいただいて、その目で見ていただきたいなあと思います。」
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