今回は、四川省攀枝花(パンジホア)市に派遣されている青年海外協力隊隊員・赤井剛史(あかいたけふみ)さんにお話をうかがいました。
赤井さんは、1年半ほど前から、攀枝花市の子供たちに野球の指導をしています。赤井さんは子供の頃から野球に親しみ、体育大学へも進学しました。そうした経験を生かしたいと考えていたところ、青年海外協力隊でスポーツ指導者を募集していることを知り、応募したのです。
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野球を指導する赤井さん |
下段中央が赤井さん | 赤井さんが派遣された攀枝花市は、四川省の最南端に位置し、雲南省と接しています。四川省の省都・成都からは、列車でおよそ14時間。主要産業は鉄鋼業で、中国十大鉄鋼会社の一つ、「攀枝花鋼鉄」が町の産業を支えています。
気候は、6月から10月が雨季。11月から5月が乾季です。1年中暖かく、冬もトレーナー1枚で生活できます。陸上選手やソフトボールチームなどが、練習合宿を行うことも多いそうです。
赤井さん「はじめ辛いものには慣れなかったんですが、1年半も住んでいると慣れてきました。四川省は"火鍋"が有名。最初、赴任したときに、1週間で3回"火鍋"を食べに連れて行ってもらったんですけれども、ものすごく辛くて。お腹壊して入院しました・・・」
"火鍋"は、四川省の名物料理。その名の通り、「火が出そうなほど辛い鍋」です。唐辛子や様々な香辛料が入った真っ赤なスープの中に、肉・魚・野菜など、好みの具材を入れて、グツグツと煮ます。それを、香味油かゴマだれでいただきます。
赤井さんの街では、四川省では、豚の腸やアヒルの足、小さいドジョウなどを入れるのだそうです。ちなみにお値段は、5,6人で大体80元(1000円ちょっと)。
"火鍋"だけでなく、四川省の料理は、辛いことで有名です。麻婆豆腐、タンタン麺、ホイコーローなどなど。しかも、ただ辛いだけではなく、「麻辣」、つまり「しびれるような辛さ」なんです。これは、山椒と唐辛子を多く使っているため。年間を通じて湿度が高い四川省。辛い食べ物は湿気を取り除き、新陳代謝を促してくれるんです。四川省の気候に合わせた味つけなんですね。
攀枝花市は、観光で有名な街ではありません。ただ、赤井さんが気に入っているのが温泉。湯船にひとりずつ入る硫黄温泉があるのだそうです。料金は1回80元(100円ちょっと)。また、「パンジホア」という花が有名です。赤っぽいオレンジ色で、枝はなく、木の幹から直接花が咲きます。パンヤ科の落葉高木で、25センチから40センチほどの高さです。3月から4月にかけて咲きます。この花の名前が、地名の由来になっているのです。
赤井さんが、ここパンジホアに派遣されたのはある理由がありました。中国では、まだ野球があまり普及していません。2002年、プロリーグがスタートしましたが、野球のルールを知らない人もまだ多いのが現状です。
そんななか、パンジホアでは、野球がさかんです。1970年代、文化大革命で東北からやってきた青年たちが野球を伝え、街では野球愛好者が増えたのです。
少年野球チームもあります。内陸にあるパンジホアでは、野球道具を揃えるのもままなりませんが、古い道具を大切に使いながら頑張っています。1999年からは、少年野球チームのレベルアップを目指し、日本から指導者を招聘するようになりました。赤井さんは、その3代目というわけです。
赤井さん「パンジホアは野球が有名な街なんで、そこにぼくが接していられるのはうれしいです。これからも野球を通じて、パンジホアを世界に発信し、国際交流していけたら。」
チームでは、他の街の少年野球チームとの試合の話があれば積極的に参加しています。また昨年は念願叶って、日本の野球少年たちとの野球交流事業も行ないました。場所は、四川省と友好提携のある広島県。昨年は友好提携20周年に当たり、各友好団体が協力して実現したのです。子供たちは広島カープの試合を観戦したり、地元の高校球児たちと合同トレーニングを行ったり、およそ1週間の日程をこなしました。帰国後、野球への思いをますます強めたようです。
「野球がうまくなりたい」「プロの選手になりたい」赤井さんは、子供たちの気持ちに応えようと、日々さまざまな努力をしています。赤井さんの任期は年内いっぱい。しかし、今後も、野球を通した子供たちとの交流は続けていくつもりです。
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