○北京の西北部にある五道口。周辺には、北京大学や清華大学、留学生の多い北京語言文化大学など、数えただけでも10個以上の大学が点在しています。五道口は、いつも多くの学生でにぎわい、「北京の学生街」とも呼ばれています。
地下鉄「西直門」駅から、13号線に乗り3つめの駅が、「五道口」駅。この13号線は、3年ほど前に開通したばかりです。駅前に伸びるメインストリートは、大学生風の若者たちが行き交い、活気に溢れています。
駅を出て、すぐ目に付いたのは、黄色い屋根のかわいらしい本屋さん。お店に入ってみると、やはり、若者だらけ。みんな真剣に、お目当ての本を探しています。1階は、実用書や雑誌、2階は、専門書や語学の教材がずらりと並んでいます。また2階には、おしゃれなカフェも併設されています。大学生が集まる五道口には、このような、若者をターゲットにした店が建ち並びます。ファーストフード、カフェ、ドラッグストア、雑貨屋、映画館、カラオケ、CDショップなどなど。
○最近の中国語ブームにより、五道口周辺の大学にも多くの外国人が留学しています。いちばん多いのは韓国人ですが、日本・インドネシア・アメリカ・ヨーロッパ・アフリカなど、世界各国の留学生が五道口を行き交います。ある日本人留学生は、「まだ北京に来てまもないが、週1度は五道口に来ています。物価が安くて、留学生の友達がたくさん暮らしているから。東京の下北沢みたいな街。」と語っていました。
留学生をターゲットにしたお店も多く作られています。日本の居酒屋やトンカツ屋、漫画喫茶、さらには就職紹介所まであるんです。
○日本のラーメン屋さんもありました。店の名前は「らーめん道場(どうじょう)」。今年3月にオープンしたばかりです。店の前で、「こんにちは、こんにちは」と、大きな声で呼び込みをしている男性がいました。店の代表・後藤照正さんです。後藤さんの笑顔につられ、私もラーメンをいただいてみることにしました。メニューのトップにあるのが、「道場ラーメン」。餃子がついて、1杯18元(日本円で240円ほど)。豚肉と野菜からとるとんこつスープは実に濃厚。細めのストレート麺が良く合います。久しぶりに日本に帰ったような、そんな気分になりました。
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店のオーナー後藤さん |
店のメニュー | 店には、日本人のほか、西洋人や中国人の若者も多く訪れていました。メニューも、日本語・韓国語・中国語・英語の4ヶ国語で書かれています。ラーメンを食べていた中国人の女の子は、「ほかで食べる日本料理は高いけれど、ここのラーメンはお手ごろで美味しい!」と言っていました。味はもちろん、この"学生価格"が人気の秘密のようです。
ラーメン激戦区である横浜で、10年間ラーメン店を営んでいた経験を持つ後藤さん。北京でラーメン店を開くきっかけをつくったのは、息子さんでした。かつて、北京の大学に留学していた息子さんの趣味は、ラーメンの食べ歩き。ところが、北京では美味しいラーメンになかなかめぐり合えませんでした。そこで、息子さんは、「北京で一緒にラーメン店を開かないか」と、後藤さんに打診してきたのです。しかし、言葉も分からない外国で店を開くことに不安がなかったわけではありません。周囲も猛反対。しかし後藤さんは、「人生1回きり。とりあえずやりたいことをやろう。海外で自分が誰かの役に立てるならば行ってみよう」と、北京行きを決意したのです。
後藤さんが一番苦労したのは、コストの面でした。日本人をはじめ、韓国人、中国人、すべての学生に納得して食べてもらえる値段がいい。息子さんと相談して、「18元」という値段をはじき出しました。しかし、日本で使っていた材料をそのまま使うのではコストが高くなってしまいます。とりあえず"重要品"(企業秘密。誰にも見られないように、家で作って持ち込んでいるそうです)の材料だけは日本から輸入し、あとは現地調達でまかない、研究を重ね、日本の味を再現しているのそうです。
北京で店をはじめて5ヶ月。まだまだ試行錯誤の連続ですが、少しずつ五道口の町にも溶け込み、商売を楽しんでいらっしゃるようでした。後藤さんは、「中国・北京に来た以上は、この店を成功させたい。日本人、中国人、すべての人と仲良くやっていくためにも、絶対に成功させたいという決意です。」と語っていらっしゃいました。
○活気溢れる五道口。3年ほど前、地下鉄の駅ができて以来、その発展ぶりは目を見張るものがあります。北京で留学生活をはじめて5年目。五道口の変化をみつめてきた、北京人民大学の豊田栄子さんにお会いしました。
豊田さんが北京にやって来た2000年、五道口は、まだ道路が整備されておらず、青空市場もたくさんあり、ロバを見かけることもあったそうです。当時のゴチャゴチャとした楽しさはもう感じられません。豊田さんは、「北京全体に言えるかもしれないですが、すごい速さでどんどん変わっていく。先週あった店が今はない、みたいなのが多くて、びっくりします」と話してくださいました。
○五道口にある飲食店では、外国語のフリーペーパーや、外国人向けのイベントのチラシなどが置かれています。外国人が生活するうえで、とても便利な環境なのです。
観光地ではありませんが、飲食店も多く、大学生の生活を垣間見ることの出来る場所。有名な「頤和園」や「円明園」の近くですから、機会があれば、ぜひ足を伸ばしてみてください。
<らーめん道場> 〒100083 北京市海淀区五道口華清嘉園12楼(地下鉄「五道口」駅すぐそば)
電話 010(8286)3900
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