暑い北京の夏。夕方から夜にかけて、市内の公園や広場は夕涼みをする人々でにぎわいます。今回は、北京中心部にある湖「前海」へ夕涼みに出かけました。 　おしゃべりをしたり、釣りをしたり、人々は思い思いの方法で夕涼みを楽しみます。夜８時ごろからは、社交ダンスを楽しむ人々も現れます。仕事を定年退職した年配の方々が、健康のため、夕涼みがてらみんなでダンスを踊るようになったのだそうです。社交ダンスと言っても、決して気取ったものではありません。参加費はタダ。男性はスラックスに革靴、女性はロングスカートにハイヒール、とおめかししている人もいますが、基本的には誰でも自由に参加することができます。ダンスに使う曲も、６０年代に流行した懐かしい曲ばかり。若い頃に戻って、はつらつとダンスを楽しんでいらっしゃいました。

　湖の周辺は、北京の古い歴史が感じられるエリアでもあります。前海一帯には、北京の伝統的な町屋である「四合院」や、皇族・貴族の邸宅などが多く保存されています。２００８年オリンピック開催に向け、北京では都市整備が進められています。古い建物はどんどん取り壊され、近代的なビルやマンションに生まれ変わり、街並みは激変しています。しかし、この前海一帯は、北京市が重点的に保護する「文化歴史街区」として、昔ながらの落ち着いた街並みを今に伝えているのです。オリンピック期間中は、世界中から多くの観光客がここ北京にやってきます。地元に暮らす老北京人・パンさんは、「この前海一帯の景色を、多くの人に楽しんでもらえたらうれしい」とおっしゃっていました。 　その古い街並みが、いま、新しいトレンドスポットとして注目を集めています。前海の西南エリアには、おしゃれなカフェやバー、アクセサリーショップなどが建ち並んでいます。かつて前海には、骨董の専門店街があったとか。その時代をイメージしてつくられたストリートなのです。どの店も、明・清の時代を思わせる伝統建築スタイルを取り入れ、それを現代風にアレンジしており、若者や海外からの観光客にとっては新鮮にうつるようです。中には、バンドの生演奏を聞かせてくれる店もありました。ジャズやロックなどの音楽を楽しみながら、夜風に吹かれお酒を飲む。こうした夕涼みが若者には人気のようです。

　この西南エリアには、昨年あたりから急激に店がふえはじめ、いまではカラフルなネオンと大音量の音楽で、夜遅くまでにぎわいます。

　昔は、地元の人々の憩いの場だった前海。今ではおしゃれな観光地としても人気です。多くの人が訪れるのは、それだけ人をひきつけてやまない魅力があるからかもしれません。

　「古さ」と「新しさ」、ふたつの表情をもつ前海へ、ぜひ夕涼みにお出かけください。

　前海・・・バス停「北海公園后門」下車すぐ