「うん、うん。主よ。ほかの料理も結構だが、この魚料理はとくにうまいのう」
これに主は、ニコニコ顔で答える。
「これはこれは、わたしめの料理があなたさまのお口にあいましたか。恐れいりまする」
「で、この魚料理はなんという名前じゃ?」
「はい。それはわたしめのふるさとから呼び寄せました料理人が工夫しました『松鼠黄魚』でござります」
「『松鼠黄魚』とな?」
「はい。イシモチという魚の骨をきれいに抜きましたあと、その姿を壊さないように油で揚げ、野菜やほかのもの甘酸っぱく炒めて片栗粉で絡め、それを上からかけたものでございます」
「ほほう!」
このときの乾隆帝は料理のうまさとこれまで店の主が一心に謝ってきたこともあって、機嫌がよくなっている。
と、このとき、蘇州の長官が、時の皇帝が私服できて、丁度町の料亭「松鶴楼」で食事しているとどこからか聞き出したのか、慌てて多くの部下を連れ、この店の前に着き、さっそく中に入って奥の個室にいた乾隆帝を見つけ、何事かと驚いている店の主の前で跪いた。
「これは、これは皇帝さま。皇帝さまがわたしめらの蘇州に参られたとは知らず、お迎えに出ることもできませんでした、どうか。わたしめの罪をお許しくださいませ」
こちら店の主、自分と話していた人物が、なんと時の皇帝だったとは夢にも思っていなかったので、驚きと恐ろしさのため、その場にしゃがみこんでしまった。
「こ、こ、これは、皇帝さまだとはまったく存じませんでした。これまで働きましたわたしらめの無礼を、ど、ど、どうかお許しくださいませ!お許しくださいませ。お願いでございます!」
店の主は必死である。これをみた乾隆帝、まずは蘇州の長官に答えた。
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