その日、滞在先の星美ホテルのドアをノックすると、部屋いっぱいに甘い円やかな香りが漂っていた。
手元には葉巻。
煙を燻らせるその葉巻には、ジャッキー・チェンの龍のマークが入っている。
そう、ジャッキー・チェンは澤田さんの役者としてのキャリアにおけるキーパーソンであり、今回も澤田さんの陣中見舞いに訪れるなど、長年深い親交を持つ。
「これからの中日交流を支える若者たち」、スペシャル企画の第二回では、俳優・澤田拳也の一風変わったこれまでの役者人生について語ってもらった。
澤田さんが役者を目指し始めたのは、大学卒業後のことだった。
当初澤田さんは、知人が所属するプロダクションでお世話になる予定だったという。
しかしその目前で、澤田さんの人生の方向性が他の役者とは少し違った道に向くこととなる契機が訪れた。
ふとした運命のいたずらで、ジャッキー・チェンも同席するという晩餐に招かれたのだ。
それまで少林寺拳法やキックボクシングなどの格闘技に没頭していた澤田さんに、世界のアクション俳優であるジャッキー・チェンが何らかのインスピレーションを見出したのかどうかはわからないが、とにかくその数十人が一堂に会した晩餐の終わりに、ジャッキー・チェンが澤田さんに声をかけた。
「いつか、一緒に映画をやろう」。
それが始まりだった。
実際にその言葉が実現するにはそれから6年もの時を要したのだが、その一言で澤田さんに開けた道は、日本で活躍する役者らとはまったく別の、風変わりとも言えるキャリアの始まりだったのだ。
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