今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は清代の怪異小説集「聊斎志異」から「王成とキツネ祖母さん」というお話をご紹介しましょう。
「王成とキツネ祖母さん」(王成)
王成は名門の家にうまれたが、自分が主になってからは、元は怠け者だったことから、そのうちに暮らしに困るようになり、ついにはいくつかのぼろ小屋が残るだけで、夫婦が寝る床もなく、毎日のように夫婦喧嘩が絶えなかった。
ある年の夏はひときわ暑く、村人の多くが、外れにある昔の金持ちの屋敷の庭園で涼を取っており、王成もそこにいた。この屋敷はすでに荒れ果てていたが、庭園の大きな東屋はつぶれておらず、広い日陰になり風通しもよいので、みんなはここで寝たりしたていた。
と、ある日、王成は陽が高く上ってからやっと起き出し、ほかのほかの村人は誰もいないので自分も帰ろうとしていると、近くの草の中に金のかんざしが落ちているのを見つけた。それには「儀賓府造」という四つの字が刻んである。
で、王成の祖父は、当時の領主であった衡王の「儀賓府」、つまり、王族の娘らの夫になったものだけが勤める役所にいたので、王家の物にはこの四文字が刻まれたのが多かったことを王成は思い出した。そこで王成はその簪を拾って考え事をしていると、一人の婆さんが現れた。
「あら、若いの金のかんざし見なかったかえ?」
「え?金の簪?・・・」と王成はためらっていたが、怠け者でも根っこは正直なことから、簪をばあさんに渡した。これに婆さん喜んだ。
「まあ、若いのはなんと正直者だね。いい子だよ」
「ええ?いい子?」
「ああ。それにこのかんざしはそんな高いもんじゃないけど、何しろ私の死んだ夫が残してくれたもんでね」
これに王成が興味深く聞く。
「おばあさん、その死んだ夫って誰です?」
「ああ。儀賓府の王柬之だよ」
「ええ?王柬之だって?その人は私の祖父ですよ、どうして知ってるんですか?」
「あら!!ということはあんたは王柬之の孫かえ?驚いたねえ」
「でも、おばあさんが祖父の妻だってことは聞いたことはありまんよ」
「そうだろうね。実は私はキツネの妖精で、美女となってあんたのおじいちゃんと夫婦になったんだよ」
「ああ、それなら耳にしたことがありますが、おばあさんを見たという人はいないみたいですよ」
「当たり前じゃ。夫以外に姿は見せられないよ。ま、そんなことはどうでもいいけど、かんざし落としてここで夫の孫と出会ったとは、やっぱり縁だね」
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