今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は昔の本「太平広記」から「爺さんから借りた筆」というお話と昔の笑い話をいくつかご紹介いたしましょう。
まず最初は「爺さんから借りた筆」です。
山東に廉広という若い絵描きがいた。
ある日、廉広は景色求めて道具を持ち泰山に登ったが、山腹で空模様がおかしくなり、風が出てきて大雨になった。これは大変と慌てた廉広はそこらをまわり、やっと大きな樹を見つけたので、急いでその下に逃げ込んだ。しかし大雨は夜になって小雨に変わり、しばらくして止んだ。が、雨雲は不意にどこかへ行ってしまい、夜空にはこれまでのことがうそだったように丸い月が出た。そこで廉広は明るい月の光の助けの下に、いち早く山を下り始め、なんと途中で一人の爺さんに出会った。この爺さん、ひげを生やし、扇子を手に向かい側から歩いてきて廉広にきく。
「お若いの、どうしてこんな夜に山へ?」
「え?あのお・・。実は・・」
「雨もやんだし、よい月夜になった。ま、こっちにきて座りなさい」
そこで廉広は、自分は帰りたいといいたかったが、不意にこの爺さんに興味がわいてきたので黙ってついていき、大きな平べったい岩の上に二人は座った。
「お若いのは、その袋の中に筆と墨がはいっているようだが、絵を描くのが好きかな?」
「はい。実は亡くなった父からいくらか教わりましたので、少しは心得があります」
「そうだろうな」と爺さんは懐から一本の筆を取り出しいう。
「わしがこの筆をお前さんに貸そう。いいかな、この筆はそこらの筆とは違うぞ。これをやたらに人に見せるのはいかん。覚えておきなさいよ。さもないと災いを招くことになる」
爺さんはこういうと筆を廉広にわたし、ふと姿を消した。
「あれ?ご老人!ご老人!」と叫んでもあたりは静かなまま。そこで廉広はその筆を大事にしまい家路を急いだ。そして翌日、その筆で鳥を描いてみたが、なんと鳥は絵から飛び出していった。これに廉広は驚き喜び、それがたまらず、かの爺さんの話を思い出したものの、我慢できなくなって数人の幼友達に、人には黙っていろとこのことを打ち明け、あとはその筆をしまいこんしまった。
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