今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は、小麦粉をこねたもので人や動物などの人形作る職人のお話をご紹介しましょう。中国ではこの職人のことを「捏麺人」といいます。このお話し、題して「小麦粉の人形」です。
「小麦粉の人形」
清の乾隆帝のときに宰相となった劉墉(よう)は、山東の人だった。父が都で役人になったので、父を頼って都で暮らすことにした。その後自分も役人となり、のちに高い位についたのだ。で、劉家の屋敷の下男などのほとんどは山東から連れてきたもので、厨房に張というじいさんがいた。ある年、その親戚で山東の荷沢生まれという王さんが、ふるさとでは生きていけなくなったと張じいさんを頼ってやってきた。張じいさんは、この劉家では長く信用されており、その親戚がじいさんを頼ってやってきたというので、この年四十幾つの親戚の王さんは屋敷に残って厨房で働くことになった。
と、ある日、小麦粉をこねていた王さんは、山東のふるさとの正月のことを思い出し、こねたものを人や動物の形に作った。この王さん、かなり器用で、その指や手のひらを使い次々に桃などの果物の形を作り、また、麺棒と箸を使い魚や蝶々、それに人間の形のものを作った。
こうしてそれを蒸かしていろいろな形の主食ができたのだが、劉家の家族、それに屋敷の者はこれに驚き、ただ見入っているばかりで、食べてしまうのはもったいないというものもいた。もちろん、主の劉墉もこれらが食卓に出てきたのでびっくり。これはおもしろい、誰が作ったのかを聞き、王さんをほめた。
こうして張じいさんから主が褒めていると聞いた王さんは、有頂天になり、よし、俺の腕を見せてやろうと、今度はもち米を少し加えて一緒に水でこね、若い娘、赤ん坊、鶏と犬などの人形を作り、それに色をつけた。これに喜んだ張じいさんが人形を主の家族や屋敷のものに見せたところ、みんなはこれまで以上に驚き、王さんを口々に褒め称えた。これを知った主の劉墉は、これら人形をまじまじとみたあと王さんを呼んだ。
「お前が山東から来た張じいさんの親戚か」
「はい、旦那さま。王と申します」
「お前の作った小麦粉の人形はなかなか面白い。で、その作り方をどこで覚えた?」
「はい、申し上げます。正月には挨拶回りというものがありますが、わしの村は貧しいので、格好のつく手土産などはとても買えません。そこで考えた挙句、小麦粉をねったもので、いろいろな人形をつくり、それを蒸かして持っていくのですよ。実はわしがお屋敷で作ったものは子供だましに過ぎず、作り方も人から教えてもらいましたです」
「ふんふん、そうか。で。二回目はどうしてもち米を加えた?」
「はい。申し上げます。旦那さまも知っておられると思いますが、もち米は傷みにくいので、子供たちは作った人形と何日も遊びます。そこで、傷みにくくさせるためにもち米を少し加えます」
「なるほど、道理に合っておるわい。で、聞くが、お前はこれまでのと違った人形を作れるか?」
「はい。ほかのはいくつか作れますが、旦那さまは、どんな人形を作れともおっしゃいますか?」
「そうじゃな。うん、あれを見よ」
そこで王さんが部屋の壁を見ると八仙人の絵が張ってある。劉墉がいう。
「どうじゃ?あの絵の八人の仙人は作れるかな?」
「え?八仙人でございますか?はい。やってみますわい」
ということになり、王さんはその日から、もち米を多めに使い厨房の隅で一心に八つの仙人を作り始めた。そして三日目にできたので、王さんは早速それを主の劉墉のところに持ってきた。
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