その数日後、一人の部下が役所にもどり、ある村の叢薪という男が数日前に、二匹の狼に追われ、もう少しで食われるところを何とか逃げ切ったものの、片方の靴を狼にさらわれたと報告してきた。そこで県令はこの叢薪という男に片方をさらわれたという靴をもって役所にこさせた。そして持ってきた靴と狼が置いていった靴とはまったくの一足であることがわかった。そこでこの叢薪をきつく尋問したところ、この男は自分が金ほしさに、かの商人を襲って殺し、金目のものを探すと首飾りと腕輪が出てきたのでそれを持って逃げる途中で、なんと二匹の狼に出くわし、ひどく慌てていたいことから腰につるしておいた首飾りと腕輪を入れた袋を落としてしまい、河に飛び込んで逃げたとを白状した。つまり、奪ったものは狼が持ち帰ったのである。そして大福がありもしない罪をかぶせられたことを知った狼は、首飾りと腕輪は叢薪が持っていたので、ある日、叢薪を待ち伏せして襲い、靴を脱ぎ落としたことから、その靴をかの上から来た役人に拾わせたということもわかった。
こうして商人を殺した下手人を捕らえたので、罪なき大福は牢屋ら出され、お構いなしということになった。もちろん、叢薪は人殺しと盗みの罪で打ち首となった。
こちら、無事に家に戻った大福は、自分を助けてくれた狼にお礼をしようと、次の日にかの初めて狼と出くわした山道に、家の鍋で煮た二羽の鶏を置いておいた。
さて、それから数日たったある日の夜。家の庭の方の物音に目を覚ましたが、「こんな夜中に誰も訪ねてくるはずがない。そして誰か来たとすればそれは泥棒だろう」と思い、さっそく包丁を手に息を殺して家の中から外の様子を伺っていた。そして誰も家の中に入って来ないし、外が静かになったので、そのまま寝てしまった。
次の朝。昨夜はいったい何者だろうと、大福が用心のため、包丁を手に庭に出てみると、庭にある石の机の上に死んだ雉や魚が沢山積まれていた。
「ありゃあ?誰だ?こんなに多くのうまいものを置いて行ったのは?」
大福は暫く考えていたが、そのうちにこれらのものはかの二匹の狼がくれたものだということがわかり、「ありがとう、狼」と叫ぶと、大喜びでこれらのものを家の中に持ち運び、その夜早速料理にして妻や子供と一緒にたらふく食べたという。はい、おしまい!
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