さて、こちら裴度だが、かの大男はやっつけたが、胡証がいうとおり、これらごろつきは誰かについて武術を習っていたことが、それぞれの構えでわかった。そこで油断は大敵とかなり気を引き締め、自分を囲んだ奴らにどこから攻められても反撃できるように構えた。一方、ごろつきどもも、この若者がこれまで接した相手より手ごわいとわかったので、それぞれ己の得意技を使おうとした。そして双方はにらみあったまま、すぐには動かなかった。しばらくしてごろつきの一人が大刀を振りかざし、「キェー」という声を放ち、裴度の左から襲い掛かったが、裴度はその動きをいち早く悟り、仰向けに倒れててそれをしのぎ、右足でそいつの下腹を思い切り蹴り上げので、その男は「グウ・・」とうなって前に走りじゃがみ込んでから下腹に両手を当ててのた打ち回った。
これを見て見物人が驚きの声を上げる。
また、ほかのごろつきはいくらかおびえだしたが、頭らしい男が、ものすごい顔をして前に走り飛び上がり、両手に握っていた太い鉄の棒を裴度の頭めがけて思い切り振りおろした。しかし、裴度が右にしゃがんでそれを凌ぎ、くるっと向きを換えて飛び上がり、地面に下りたばかりの男が振りたので、右のこぶしを男の顔面に強く入れた。
すると頭は「ぎゃー!」と悲鳴を上げ、鼻血を飛ばして俯けにぶっ倒れた。が、裴度の攻撃がこれで終わったわけではない。頭が地面でもがいているのをびっくりしてみているほかの男たちめがけて裴度は、木の上の猿がほかの木に飛び移るかのようにすばやく動き、ごろつき一人一人に強いけりを入れた。こうしてほかの男たちは裴度のけりを顔や胸に受け、いずれもうしろに吹っ飛んだ。これに見物人からどっと歓声が上がった。こちら裴度は、それでも相手が這い上がり襲ってくるのを待ったが、どうも自分のけりがかなり効いたらしく、ごろつきたちはそれぞれ地面で動けなくなり、うめき声を出している。そこで裴度は背を伸ばし、頭の男の前にきて、その襟を右手でつかんで引き起こし「どうだい?まだやるかい」と凄みを利かせた声でいう。これには頭、惨めにも鼻血を流しながら、おびえた顔をしてこわごわとつぶやいた。
「許してくれ。俺たちゃあ、あんたの相手じゃねえ。勘弁してくれ」
「ふふん。なんだい?お前たち、もう降参かい。だらしないねえ」
「ほんとうだ・・あんたは俺達より段違いの強さだ。もう勘弁してくれ」
「そうかい。じゃあ、勘弁してやるが、店の中で俺が言ったことを覚えているか?」
「ええ?」
「お前も物覚えが悪いな。実は俺の幼友達が、お前たちにこれまでかなりお世話になったというので、今日は俺が代わってお前たちにお礼をしようと思ってねといっただろう?」
「ああ。それが?」
「そうよ。お前たちにお世話になった俺の幼友達がここにいるのでよーく見ておきな。いいか!」
「わかった!」
「おい。胡証。こっちこいよ」
そこで胡証は裴度の横に立った。
「おう!ごろつきども。これが俺の幼友達だ!これまでかなりいじめたらしいな。本当なら仕返しとしてお前らの手や足の骨を折るところだが、ま、俺の幼なじみがあまりひどくするなというので、勘弁してやらあ」
「へい、へい。ありがとうございます。これは胡証さん、このお人があんたの幼友達だとは知りませんでした。これまでのこと、どうか勘弁してください」
これをきいた胡証はニヤリと笑い「もういいだろう!裴度、いこう!」という。そこで裴度も、そうか。じゃあいくかといい、ごろつきどもに「いいか!今日店で飲んだ酒代はお前立ちがちゃんと払うんだぞ!それにこれからはおとなしくしていろ!悪さは止めるんだな。俺はこの町に住み込むつもりだ!いいな」という。
これを聞いたごろつきたちは、何度も何度も首を縦に振った。こうして裴度と胡証は、見物人たちが褒める中を仲良くいってしまったそうな。はい!
そろそろ時間のようです、来週またお会いいたしましょう。
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