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「夏の夢」

2010-01-12 12:17:41     cri    

 「墓場選び」(虫+馬蟻)

 唐の文宗帝のころ、忠州の曙セ(てん)江県の役人冉瑞は、父が亡くなったので、風水先生を呼んで父の墓はどこにしたらよいかを占ってもらった。そこで先生が、暫く東西南北とそれぞれながめ、手指を伸ばして数えてから、眼をつぶってうなり始め、酒をいっぱい飲んでからいう。

 「これは、これは、いいところが見つかりましたぞ」と西の方に冉瑞を連れて行き、ある丘の下の土地と指差した。

 「うん、うん。ここがよかろう」といい、冉瑞から代金をもらってニコニコ顔でどこかへいてしまった。

 冉瑞はさっそく人を雇ってそこを掘ると、なんと大きなアリの巣にぶつかってしまった。このアリの巣は城のようであり、たくさんの穴にはアリがうじょうじょしていて、このような穴が数百も並んでいる。このありの城を壊してしまったのだからそれは大変。怒ったアリたちは、死に物狂いで自分たちの住処(すみか)を壊した人間を襲い、アリの巣の奥からもどんどんアリが出てきて、ここら一帯に住む人々までも襲った。その数はすごく多いというものではなく、黒い土が動くようで、襲われた人々は悲鳴を上げ、逃げ回ったり、のたうちまわったりし、襲われた住まいは黒く染まり、やがては崩れ落ちるというありさま。

 で、このことを役所に届けるものがいて、これを知った役人は、かの場所の近くにきてこのひどい様子を見てびっくり。こうして何とかし、この騒ぎを収めようとしていると、急にアリたちはまた自分の城にぞろぞろと引き上げていったので、この日は何とかおさまった。

 役人たちは事のわけをきいてから、翌日県令に申し出た。これに県令は怒ったが、実は役人である冉瑞とは昔からの友達。それに冉瑞の父にはむかし世話になったことがある。そこで仕方がないので、冉瑞をよび、ほかのところにするよう勧めたが、翌日、冉瑞が厳というもう一人の風水先生に占ってもらったところ、やはりかの場所がいいという。そこで冉瑞、今度はアリを何とかしなければと、多くの人を雇って、あまり遠くない丘の下に、土や砂でここのありの城と同じような住処を何日もかかって作らせ、ありが好んで食べるという虫の死骸や草の種、そしてサトウキビなどをその巣の中に入れた。こうして数日たつと、なんとアリたちは虫やサトウキビの匂いを嗅いだのか、丸々二日かけてその新しい住処に移っていた。こうして冉瑞はやっとのことで、そこに父の墓を立てた。

 さて、その日の夜、かの風水先生の厳さんが急にひどい熱で倒れ、そのうちに気が狂ったように自分で両方の頬を叩いたり、柱に頭をぶつけたりする。これを聞いた冉瑞は、これは自分のせいだと思い、さっそく家の庭にアリを祭る壇を作ってアリが好みそうなものを供え、天に向かってアリにお礼をいい、また厳という風水先生を呼んできて、自分と一緒にアリを拝ませた。それが終わってから上等な薬をこの風水先生に飲ましたので、この先生は数日後にやっと元に戻ったという。やれやれ!

「飛蝗」

 晋の孝武帝のとき、皇帝の言葉を書き記したり伝えたりする中書侍郎という役を務めていた徐障・iバク)が、いつのもように仕事場にいた。部下たちがとなりの部屋で仕事をしていて、昼過ぎに窓を開けていると、何かが飛んで入って、奥の屏風のうしろにいき、今度はどうしたことか近くにある大きな壷の中に落ちてしまった。そこで一人の部下が壷の中を見てみると、それは一匹のバッタであった。しかし、その部下は始めてバッタを見たので何かわからない。それに壷の壁に強くぶつかって気を失っているようなので、部下はバッタを指でつまみあげると、なんと両側の羽をもぎ取ってしまい、「なんだ?つまらん」とそのまま壷の中に捨て、ふたをしてしまった。。

 さて、その日の夜、徐障・ヘおかしな夢を見た。夢の中に娘に化けたというバッタが出てきていう。

 「わたしは遠くからきましたが、あなたの部下に羽をもぎ取られ、また入り込んだ壷のふたをされてどこへも行けなくなりました。どうかしてください」

 次の日、徐障・iバク)は部下たちに言う。

 「昨夜、不思議な夢をみてな。きれいな娘が出てきてわたしにいった。自分ははバッタだが昨日、迷子になってある窓から中にはいり込み、大きな絵の描いた薄い壁の周りを飛んでいると、めまいがしてある壷の中に落ちてしまった。するとお前たち部下がつぼの中から自分をつまみ出し、なんと大事な翼をもぎ取ったあと、また壷の中に封じ込められたので、帰るにも帰れなくなったといって嘆いておった、」

 これを聞いたかの部下が、あわてて壷のふたを開けると、かのバッタが這い上がってきて、なんと一飛びして窓の外へ逃げてしまった。

 このときから、徐障・フ部下たちはバッタをいじめることはなかったが、かのバッタの二つの羽をもぎ取った部下は、ある日、崖から落ちで大怪我をし、その後はちゃんと歩くことも出来なくなったという。

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