出てきた母は、暗闇の中で息子を認めると、「息子や、やっと帰ってきたのかい?」と涙ぐんだ。
これに孟金貴も目が熱くなり、出てきた母を慌てて支え家の中に入った。そしていう。
「かあさん、なんだい?夜になっても戸締りはしないのかい」
「何を言う。お前が捕まっていったので、またいつ会えるのかわからないだろう。もしかしたらお前が帰ってくるのではないかとね。私は耳が遠いので、夜は寝ないで耳を澄ましてじっとお前を待っていたんだよ」
これを聞いた孟金貴は、「母さん、すまねえ」といって小声で泣き出した。しかし、自分が逃げてきたことは何とかごまかした。
さて、孟金貴は久しぶりに母が作ってくれた飯をたらふく食べた。実は自分がいなくなったので母は毎日ひもじい思いをしているだろうと思っていたが、帰って来てみると、母の暮らしはそう悪くなかった。孟金貴は不思議がったが、それより大事なことがあるので黙っていた。そして母にうそをついた。
「母さん、村は貧しいから俺は出稼ぎに行くよ。明後日でも岳陽で仕事みつけてくらあ。そしてたくさん稼いで、村に帰り、家を買い、田畑を買い、嫁ももらって母さんを楽にしてあげるよ」
「それはうれしいけど。また私のもとを離れるのかい?」
「それは仕方がないよ。そうしないと、いつまでも貧乏でいなきゃならないもの。それに母さん、おいらが今夜戻ったことは人に言っちゃあいけないよ。変なうわさが起きたら面倒くさいから」
これに母は仕方なくうなずき黙ってしまった。その夜は孟金貴はぐっすり寝た。そして翌日目が覚めたのは昼前だった。孟金貴はその日はどこにも行かず、家で母の手伝いなどをしていた。夜になって母が赤い布で包んだものを出して孟金貴に渡した。
| ||||
© China Radio International.CRI. All Rights Reserved. 16A Shijingshan Road, Beijing, China. 100040 |