ギャップイヤーとはもともと、高校卒業から大学入学までの期間、あるいは大学卒業から大学院への進学までの期間のことを指します。英語圏の大学の中には、入試から入学までの期間をあえて長く設定して、その間に大学では得られない経験をすることが推奨されています。この時期にアルバイトなどをして今後の勉学のための資金を貯める人も多いし、外国へ行って、ワーキング・ホリデーを過ごしたり、語学留学したり、あるいはボランティア活動に参加する人も多いのです。
最近、中国では「遅刻のギャップイヤー」というベストセラーが大ブレイクしました。作家の孫東純さんは2万元を持って、13ヶ月間NGOボランティア活動に参加し、1年間の旅をした経験を一冊の本にまとめました。中国で初めて「ギャップイヤー」という言葉を使い、若者の間では話題となっています。
ギャップイヤーは西側諸国では非常に流行っていますが、アジア諸国では余り知られていないようですね。とにかく、若者が卒業する前、或いは就職の前に、1年間ぐらい長い旅をしたりボランティア活動に参加したりして、見聞を広め、社会的な経験を積み重ねることを指しますね。
孫東純さんと日本人の奥さん
孫東純さんの「ギャップイヤー」はもともと3ヶ月間の計画でしたが、実際は13ヶ月間続きました。彼は中国からタイ、ラオス、ミャンマー、インド、パキスタン、ネパールを訪れ、現地のNGO組織と連絡して、ボランティア活動に参加してきました。「若いうちに、できるだけ多くのところを訪れ、多くの人を助けることは、他人のためにもなるし、自分のためにもなる」と孫さんはこのように感想を述べています。孫さんはとても、多くの経験を海外で得て、それは、きっと人生の宝物ですね。特に中国では今まで、こうした若者は少なかったでしょうし、著しい経済成長の中で、こうした若者が生まれてくるのは、何か時代の必然と言う気もしますね。なかなか勇気のある若者ですね。確かにいまのような受験社会では、勉強の目的は早く単位をとっていい職業に就くことになりつつありますね。学生さんたちもますます現実的になっています。旅をして、いろいろと苦労して社会的な経験を積み重ねることはキャンパスでの勉強より、多くの生活知識やノウハウを身につけられるでしょう。
孫さんの物語に励まされ、いま、中国では多くの若者はギャップイヤーに興味津々です。インターネットでは、「ギャップイヤー」を催す専門のサイトまで誕生しました。名前は「ギャップイヤー旅行ネット」です。多くの若者はこのサイトを通じて、自分と同じ夢を持っている仲間を探し、一緒にギャップイヤーの旅に出かけることにしています。さらに、わざわざ1年間休学してギャップイヤーに出かける学生も現れました。彼らの特徴の一つは、親から少しの旅の資金を借りて、旅先でボランティア活動やアルバイトをしながら、旅を続けるということです。一人ならちょっと寂しいけど。同じ趣味や夢を持っている若者同士が一緒に旅をすれば、親側も安心できますし、本人も心強くなるでしょう。こんな特別の旅を一緒に体験すれば、一生の友人になるでしょう。
ネットで調べたら、日本ギャップイヤー推進協会と言うのがあって、ギャップイヤーの制度を日本の大学の標準整備にしようと書かれていたので、日本ではまだこれからの制度のようだ。ただ、ギャップイヤーと言う制度の中ではないが、人生の武者修行に海外に出かける若者は、日本でも決して少なくない。そうした人たちには、決められた、人生のカレンダーを歩むのではなく、人生のカレンダーは自分で作り上げていくのだと言う気持ちの人が多いような気がする。そうした人たちは、外国で、多くの友情を育んでいくのでしょうね。
では、なぜギャップイヤーの理念は中国で多くの若者に受け入れられ、人気になったのでしょうか。その魅力はいったいどこにありますか。「遅刻のギャップイヤー」の作者である孫さんの意見は「いまの中国では、都市生活のストレスがあんまりにも大きいから」ということです。
勉強や就職のプレッシャーが大きくなり、都市部での生活コストがどんどん高まっています。社会人になる前に、自分に一つのロングバケーションを与えたいと思っている若者が大勢います。また、孫さんのような、就職した若者も仕事をやめて、ギャップイヤーの長い旅に憧れています。その理由は依然として生活プレッシャーが大きく、しばらく現実から逃げ出したいということです。
2010年の「中国都市部サラリーマンの健康白書」によりますと、都市部で暮らしている76%のサラリーマンは「亜健康状態」、つまり「病気と健康の間」にあるということです。北京や上海のような大都市では、6割以上の若いサラリーマンは過労で、ストレス発散の方法には、9割以上の若いサラリーマン「自然豊かなところへ遠足とか旅行に行くこと」を選びました。
ギャップイヤーが、現実からの逃避といってしまうと、何かさびしい気もしますが、現実的にはそういう側面もあるでしょうね。ギャップイヤーは一つの理念で、丸1年間旅に出るのではなく、しばらくの間、都市生活の煩わしさから逃げ出して、自分の体と心を寛ぐための口実になっているようです。
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