皆さんは留学された経験がありますか。もし若い頃、留学のチャンスがあれば、どの国に憧れますか。中国では、留学ブームがますます盛んになっています。異国の文化や風俗習慣、ライフスタイルをこの目で見てみたいし、世界へ冒険に行くっていう好奇心はどの国の若者でも同じでしょうね。でも、最近、中国の留学ブームにはアメリカへ行く学生の数は急激に増えています。
国際教育協会の統計によりますと、2010年から2011年にかけて、、アメリカで留学している中国人学生は前の年より23%も増え、15万7558人に達しました。これは、世界留学生総数の21.8%を占めており、二位のインド留学生より5割も多いということです。ちなみに、中国人留学生の数は2009年から2010年にかけて初めてインドを超え、世界一となったのです。
<中国人の米国留学の歴史と特徴>
① 中国人のアメリカ留学ブーム、実は最近のことではなく、6年前(北京五輪前)から始まりました。国際教育協会の統計によりますと、およそ2006年か2007年前後、アメリカへ留学に行く中国学生の数が急激に増えました。それまでの6、7万人から15万人ほど増えたのです。
② また、中国教育省のデータでは、2011年度、海外留学に行く中国学生は33万9700人ぐらいで、そのうち、アメリカへ行く学生は半分ぐらいを占めているということです。
③ さらに、アメリカへ留学する中国人学生のうち、ほとんどは本科生です。国際教育協会のデータによりますと、いま、アメリカにいる留学生のうち、中国人は一番多いですが、主流は本科生です。これと違って、二位のインド留学生のほとんどは大学院生だそうです。一部の学生は国内の大学受験の激しい競争を避けるため、海外留学を選んだようです。言い換えれば、海外留学は国内の受験教育の逃げ口になっているのです。
④ また、もう一つの特徴は、これらアメリカへ留学する中国人学生のほとんどは自費留学だそうです。国際教育協会のデータでは、アメリカにいる中国人留学生のうち、本科生の81%(8割以上)、大学院生の49%(半分近く)は自費留学だそうです。
確かにここ数年、中国では貧困の格差が大きくなって、富裕層が拡大していますが。それにもかかわらず、アメリカ留学に行く学生のうち、一般家庭の子供も多いようです。一人っ子政策の中国では、一家の希望は子供に託していますので、親はいくら節約して苦労しても、子供の教育費用を絶対に惜しくないんですね。
盛んになりつつある中国学生のアメリカ留学ブーム、その背後には多くの憂慮が隠されています。
① 留学費用の高騰
経済危機に悩まされているアメリカ、留学費用も次第に高くなっています。一部の公立大学にとって、政府からの教育予算が削減され、基本運営を維持するため、やむを得ず学費の上昇を選びました。2008年下半期から、連続3年間、アメリカの公立大学の学費や雑費の値上がり幅は私立大学を上回りました。各州の学費の上昇幅はそれぞれですが、カリフォルニア州、フロリダ州、ニューヨークとワシントン州では、公立大学の学費上昇幅はいずれも15%を超えたということです。
経済危機を緩和するため、公立大学も私立大学も国際留学生を大歓迎し、応募人数を拡大しています。
留学が負担する学費や雑費などはアメリカ人の学生より多いようですね。聞いた話では、ほぼ3倍になるということです。また、「ニューヨークタイムズ」のある調査では、四分の三のアメリカ人はいまの学費は一般のアメリカ家庭にとっては非常に高いと答えていますが。アメリカ家庭にとっても高いなら、中国人の一般家庭にとってはとっても大変でしょう。
② あるインターネット調査では、アメリカへ留学するなら、一般の中国人家庭は4年に200万から300万元(日本円で3000万円から4000万円ぐらい)かかるということです。また、アメリカ商務省のデータでは、2010年、中国人留学生は合わせてアメリカに39.66億ドル(学費と生活費累計)を貢献し、すべての留学生の18.6%を占め、1位を占めたということです。
日本の大学で入学から卒業までにかかる費用は一般的には1000万円ぐらい。うちの娘は、大学を1年休学して、カナダに1年間、語学留学したが、それでも、親の負担は大きかった。まして4年間の留学で、大学の授業料も上がっているとなると、富裕層が増えている中国と言えども、相当な負担になるのでは?
200万か300万、中国の一般家庭にとってはすごい大金ですね。でも、このお金、いま北京や上海では、100平米のマンションを一つ買うにも足りないものですから、富裕層にとってはたいしたものではないかもしれませんね。
③ 富裕層の留学心理
中国の興業銀行は今年3月に発表したある報告書によりますと、中国では、億万長者のうち、9割は子供を海外留学に行かせたいということです。また、85%の富裕層は子供の教育費用を家庭支出のTop3に選んだことも分かりました。その理由には、アメリカの学歴は「成功」のシンボルの一つだと挙げられています。志摩さんはこのような親の心理を理解できますか。
経済発展が続き、社会も、家庭も上昇志向の強い中国の特徴が良く出ているのでは、社会での子供の成功に対する親の投資意欲がとても高いと言う気がする。日本でも、高度経済成長の時代は人々が、とにかく前に前にと進んだが、今は、価値観が多様化して、そこそこの暮らし、その人なりの暮らしを求める時代に変化してきている。
中国はあんまりにも人口が多いため、国内の受験競争は激しく、名門大学に入っても専攻によって、卒業してから良い職に就かない恐れもあると言われています。
④ 留学教育仲介機関の不正運営
日増しに増えつつあるアメリカ留学のニーズに伴い、一部の留学仲介機関の不正運営も話題になっています。金銭で学位を与える大学、ディプロマ・ミルのことを中国語では「野鶏(やけい)大学」と言いますが、統計では、世界中691ヶ所の野鶏大学のうち、半分はアメリカにあるということです。不正の留学仲介機関や野鶏大学に騙された学生も大勢いるようです。
各項目に受けて、二人のコメント
今、中国の若者たちが世界に出て、はばたくことは、はすばらしいこと。ただ、本当の中国の発展につなげるためには、肩書きとか、そういうことではなく、様々な価値観や、生き方を学んで、幅の広い国際人を目指してほしいですね。世界は広いものです。若いうちに外国の教育様式や考え方、風俗習慣などをいろいろ体験して、優れた文化や知識を身につけたほうはきっと人生のためになります。ただし、海外留学は親の命令ではなく、自分の夢につながるはずです。金銭面のことや様々なリスクが伴っていますので、行く前によく覚悟しなければなりません。(11月1日OA『イキイキ中国』より)
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