7月23日夜、温州郊外で起きた高速列車の追突事故から10日経とうとしています。
2015年までに、高速鉄道の営業キロを1万3000キロに伸ばし、世界最長になる整備計画を進めている最中での出来事だけあって、大きな衝撃が走っています。
事故が起きたのは、23日前に開通した北京・福州線です。全長2233キロ、いま、中国最長の高速鉄道路線でもあります。中国鉄道省は、事故再発を防止するため、2ヶ月にわたる全国規模の安全点検を進めており、隠れた安全リスクの摘出に尽力しています。
一方、今回の事故が中国経済に与える影響も注目されています。鉄道関連株の暴落で影響を受けたA株市場(国内の投資家向けの人民元立て市場)を始め、急速に整備されつつある高速鉄道網とそれを支える鉄道関連投資と負債の行方、ひいては中国経済の今後の成長パターンへの影響に社会の注目が集まっています。
■低迷が続く鉄道関連株
23日(土)夜の列車事故を受け、上海証券取引所に上場している鉄道関連株33銘柄の時価総額は、わずか2日で376億元(日本円ではおよそ4500億円)も縮小しました。
鉄道関連株はここ数年来、勢いよく成長し続けていることから、株式市場を押し上げる上で重要な役割を果たしてきました。ただ、今年に入ってから、鉄道株は調整期に入っていました。2月初め、元鉄道相の汚職問題が発覚したのを受け、鉄道株の時価総額はピーク時より30%下がりました。
アナリストは、今回の事故の深刻さから、もともと疲弊状態にある鉄道株は、今後も引き続き下げ傾向が続き、下半期は継続的に激しい変動にさらされるだろうと見ています。
「追突事故が中国の資本市場に与えた影響は投資者の予想を上回るものになった。そのマイナスの影響はもしかしたら、まだ始まったばかりに過ぎないかもしれない」という見方も出ています。
■減らされるか、インフラ整備の投資
固定資産投資は、中国の経済成長において重要な役割があります。2009年、GDPに占める固定資産投資の割合は67%でした。固定資産投資の25%をインフラ整備が占めており、その中で最大のシェアを占めているのが鉄道投資です。
計算によりますと、7000億元の鉄道投資には3000万トンの鉄鋼、1億4千万トンのセメントが必要です。また、全国の半分以上の物流と8割の石炭が鉄道で運搬されていることから、鉄道投資は鉄鋼、セメント、石炭産業ともプラスの相関関係にあり、経済成長を牽引する要素の一つです。
もし今回の事故により、高速鉄道整備への投資テンポが緩やかになっていくとすれば、中下流産業の需要にも影響が及び、鉄道投資による経済成長を牽引する力が衰え、経済の各種指標にまで響くのではという懸念が出ています。さらに、事件の影響で国産技術や設備の仕入れが減られることになれば、鉄道信号と通信システムのみでも、年間500億元の市場シェアに影響が出る試算になります。
ただ、こうした懸念は短期間のものに過ぎず、長期的に見れば、中国経済が高度成長を続けていく勢いは変わらず、人や物の流れが伸び続けていく傾向も変わることはない。高速鉄道網の全国普及計画そのものの傾向も変わらないだろうという指摘もあります。
アナリストはさらに、もし今回の事故処理の成果として、鉄道省の改革が実現となれば、将来的に見ると、市場の上昇を押し上げる良い材料にもなると見ています。
■世界最速の高速鉄道整備計画
中国鉄道省が2010年3月に発表した高速鉄道整備計画によりますと、2012年までに、「四縦四横」(国土を横断、貫通するように縦、横4本ずつ整備する)の幹線を整備し、それにより、中国の高速鉄道は全営業キロが1万3千キロに伸び、世界最長になります。海外から高速列車の導入を決めたのは2004年のことだったので、ゼロから世界一まで10年足らずで完成するという計画になります。
これらの幹線は、すでに運行開始の路線は13本、建設中が26本、これから着工予定のものは23本です。中でも、すでに営業開始している13本の路線だけでも、すでに5898億元の資金が投入されました。また、建設中の26本の総工費は8491億元になると見込まれています。
鉄道省は、鉄道整備の資金は保障されているので、将来も投資は減らさないと訴えていますが、業界筋は今回の事故を受け、投資規模にはある程度影響が出るではないかと見る意見もあります。
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