カフェ・バー2nd placeで行われた初めての個展
―芸術について―
芸術とは何なのでしょうか。わたしが芸術家と名乗ると、みなさんの中には、芸術とは?芸術家とは?といった疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
わたしは、「芸術とは価値である」と考えています。一般的に芸術と呼ばれる分野のみならず、技術や産業などさまざまなフィールドにおいて芸術は存在します。つまり、分野に関係なく、「価値あるもの」が芸術であると思うのです。
今回はわたしが携わる、一般的にアートと呼ばれている分野について話をしていきたいと思います。
現代アートの多くはわたしたちにとって分かりづらいものであったりします。特に現代では昔と違い、芸術品と呼ばれる作品が美しいものとは限りません。それでは、芸術と呼ばれるものが昔と変わってしまったのかといえば、そういうわけではないと思います。
芸術には作成された時代背景や作家の立場など、社会情勢が色濃く反映されます。その当時の人々の共通認識である社会問題が反映されているものもあれば、作家本人が自己を深く探求して何かを吐き出すような主観的な作品もあります。
また中国の山水画は、道教の思想に親しみ山で隠居をしていた人達が発展させたものです。その作品の多くは社会から隔絶されているように見えますが、これらの作品は一見俗社会から距離を置いたように思われるその作家が帰属する社会に生きていたことを生々しく伝えています。
このように、作家はみな自分が社会に生きているなかで感じていること、見ているものを表現しています。そして、表現方法に「美しさ」という制限があった昔に比べると、現代はとても自由な表現が許されています。一見美しく見えない作品にも「美しさ」とは違った価値があります。「美しさ」は価値のひとつの側面でしかありません。
「価値」はすぐに見えるものもあれば、ずいぶん先になって見えてくるものもあります。経済活動のなかで、金銭に還元されにくいものは淘汰され易いという側面もあります。芸術家という立場は、そんな世の中で見逃されたり無視されやすいものに目を向けて価値を認めることが可能だとわたしは考えています。
今現在のわたしの結論では、芸術家の仕事の最も重要な部分は「見ること」にあります。世界で起きること、自分の人生に起きることから目を背けずに、その物事の本質を考えること。それが作品の深み、芸術家としての幅を拡げることにつながると考えます。
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