北京
PM2.577
23/19
米国は、8月1日から中国製の電気自動車(EV)やバッテリーなどEVとその関連品を対象に100%の追加関税を課す計画だった。しかし実施2日前の7月30日になって、米国通商代表部(USTR)は関税の引き上げ開始を少なくとも2週間延期するとの声明を発表した。
7月31日付の『日本経済新聞』は、「米国の一部業界団体から、関税の引き上げに猛反発が出ており、調整にはさらに時間が必要だ」と報じた。このような大騒ぎになることは当初から分かっていたはずなのに、どうして関税引き上げの計画を立てたのか。そもそもは、バイデン大統領が今年の米大統領選開始前に、政策によって票を集めようとして「関税カード」を切ったのだが、結果は当てが外れたということだ。
近年になり中国のEV産業が迅速に発展していることで、米国の一部政府高官は自国のクリーンエネルギー産業の発展について憂慮している。中国の自動車輸出台数は昨年初めて日本を上回り、世界第1位になった。うち新エネルギー車であるEVとプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)は全体として前年比77.6%増の120万3000台だった。中国製EVは価格競争力が強い。米国が関税を引き上げれば、自国に大きな影響を及ぼすことになる。
まず、米国の消費者の負担が大きくなる。そして自国産業の競争力を損なう。統計によれば、これまでの対中関税引き上げは、米国の消費者に2300億ドル(約34円)を超える負担増を強いた。1家庭当たりでは年間1300ドル(約19万円)の出費増だ。世界最大の金融・経済・ビジネス専門テレビ局の米CNBCはこのほど、ウェブサイトに掲載した記事で、「物価の高止まりにより、米国民の多くが債務問題に直面している。米国の政治家は『関税』の旗を奉り、米国製造業を振興させ、国民の就業を確保すると断言した。しかし2018年の関税をめぐる公聴会では、関連業界代表の95%が米国の関税引き上げに強く反対した。その理由は、中国には代替困難な比較優位性があり、関税の大幅増によって原材料の輸入コストが大きく増え、米企業と川下工場の負担が大きくなり、さらに多くのスタートアップ企業が倒産の危機に直面し、大手企業もコストを削減するために工場を中国に移す可能性があることだった」と紹介した。
さらに、多くの欧州諸国が反対している問題がある。米国は関税を次々に引き上げて、同盟国と共に中国に対抗しようとしているが、「笛吹けど踊らず」の状態で、逆に疑問に思われている。ドイツのショルツ首相やスウェーデンのクリスターソン首相は公の場で、「欧州諸国は米国に追随してはならない」と警告した。さらに、欧州議会のランゲ国際貿易委員長は、「米中の貿易戦は最終的に産業の向上と市場競争に不利益をもたらす。欧州は、対中国調査を通じて中国の経済発展を阻止することを狙ってはならない」と述べた。
関税の引き上げは中米関係の安定を破壊し、協力の雰囲気に影響を及ぼす。また、関税の引き上げでは中国を抑圧しようとして、実際には中国をさらに発展させた。専門家は「米国の追加関税措置は米中の貿易分野の対抗のエスカレートを意味し、これまでの比較的安定した状態は終りを告げる。米国大統領選挙の情勢が緊迫化し、米中関係はより多くの不確定要素に直面する」と分析した。スペインなど多くの欧州国家はこのほど、奇瑞汽車など中国の自動車メーカー各社が欧州に生産拠点を設置することに歓迎の意を示した。2001年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジョセフ・E・スティグリッツ氏は、関税は一時的に米国のEV市場を「保護」するかもしれないが、米国を先行させることはできず、中国が世界の他の地域で直接の主導権を握ることを促すだけだと述べた。
現在はバイデン政権の支持率が上昇しないどころか、下落している。関税政策はバイデン政権の支持率を高められなかった。米大統領戦の結果は11月に出る。誰が大統領の座に就くかは不明だが、関税引き上げの影響はすでに深く進行している。(CGTN論説員)
KANKAN特集