7月7日は日本の年中行事・七夕祭りですね。今年の七夕は二十四節気の一つ小暑に当ります。小暑は「本格的な暑さが始まるころ」。つまり、盛夏の入り口の頃です。北京は7月に入ってから、最高気温が34度ぐらいの蒸し暑い天気が続いています。夕方、川辺を散歩すると、あっさりしていて上品な匂いがどこからか漂ってきました。たどってみると、ひっそりと咲き始めた、美しいハスの姿を見付けました。この季節だけの、楽しい、小さな発見でした。
さて、中国西南部の少数民族の人々は花や鳥、魚、虫なども美しい声を持ち、夏のセミの声や春の鳥の囀りなどはいずれも、季節季節の自然の美しい歌声だと考えています。そして、そこに住む人々は昔から自然と調和が取れた安らかで幸せな生活を送ってきました。今回の中国メロディーは皆さんと一緒にこの中国西南部のトン族の村に入り、トン族の伝統音楽の独特な魅力を楽しみましょう。番組の中でご紹介するのは「春蝉之歌(春ゼミの歌)」、「走寨(村を訪れる)」、「月光曲(月光)」、「篝火晚会(かがり火の夕べ)」の4曲です。
トン族は中国西南部の貴州省や湖南省、広西チワン族自治区に住み、人口は260万人ぐらいです。トン族は文字を持たなかったため、多くの優れた文化や歴史、生活習慣、などを美しい歌声で代々伝えてきました。特に「トン族大歌」と言われる、トン族のアカペラの歌声は、トン族のその伝統音楽の歌の中でも最も優れたものだと言われています。
トン族の大歌は3人以上の人がともに歌うアカペラです。指揮や伴奏がなく、自然なハーモニーが特徴で、鳥や虫の声、それに流れる水の音など自然の音を真似ることを通じて、自然や労働、それに愛情や友情を讃えるものです。
トン族のアカペラは低音部が主旋律で、多くの人が一緒に歌います。高音部は1人或いは2、3人のソプラソやテノールがリードして歌います。トン族の人々は幼い頃から歌を学び、みんな、歌が堪能です。特に、アカペラの合唱はとても素晴らしくて、中国音楽界のみならず、世界の音楽界でも高い評価を受けています。
1曲目 春蝉之歌(春ゼミの歌)
1986年10月に9人のトン族少女からなる合唱隊がフランスのパリで行われた芸術祭でこの歌を披露したとき、総立ちの観客から約5分間にわたり大きな拍手が送られました。彼女たちの美しい歌声は「泉のように輝く音楽で、イタリアのオペラと肩を並べることができる」と称えられました。
2曲目 走寨(村を訪れる)
トン族の伝統音楽は非常に豊富で、詩の故郷、歌の海と称えられています。お祭りの日やめでたい日、何にかの伝統行事がある日に、トン族の人々は綺麗な民族衣装を纏い、村全体で広い空き地に集まって、隣の村の合唱隊を迎えて歌います。これは若い男女が結婚相手を探すいいチャンスです。若者と娘たちが歌で想いを伝えて気の合う恋人を探します。この曲ではこんなことが歌われています。
歌わなければ、青春はまるで水のように速く流れていくだろう。
人も三十を過ぎると、緑の葉が黄色く色付いたようになる。
人生が短いものだ。やる気があっても力が及ばないこともある
月日の流れは速いが、君との出会いは永遠に心に刻まれる
歌詞の内容はとてもやさしいようですが、実は深い意味を含んでいます。トン族の言葉で歌うこの歌は歌詞の内容がわからなくても、男女歌手の優しい歌声から真摯な愛情を味わうことができます。
3曲目 月光曲(月光)
トン族の人々は「ご飯は体を、歌は心を養う」と信じています。歌を歌うことを食事と同じように大切にし、歌を心の食糧と見なしています。その歌の内容はほとんどが、自然や労働、愛情や友情などを取り上げています。こうした優しく素朴な歌の文化のせいでしょうか。トン族の村には喧嘩や窃盗などの事件はほとんどなく、道に落ちているものを拾う人もなく、夜も戸締まりをする家がないそうです。まるで、桃源郷の世界のようです。この曲はトン族の村の美しい夜を描いています。
4曲目 篝火晚会(かがり火の夕べ)
昔から山奥に住むトン族は万物に神が宿ると信じ、自然を恐れ、敬っています。清貧に甘んじて、自然と調和が取れた心豊かな生活を送って来ました。このトン族の村で創作のインスピレーションを探そうと、ここ数年、多くの音楽家が訪れるようになりました。中国の有名な作曲家・何占豪さんもこの村を訪れ、トン族のアカペラを元に「篝火晚会(かがり火の夕べ)」という作品を作りました。
トン族の人々がかがり火を囲んで歌ったり踊ったり。みんなの明るい笑顔をかがり火が照らす。そんな様子が浮かんでくるようですね。
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