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「蘇州の白湯麺」

2012-05-31 10:37:09     cri    

 題して「蘇州の白湯麺」

 夏になり、気温が上がるに伴い、人々は味が薄いさっぱりしたものをほしがるのはいつでも、どこでも同じ。蘇州では暑くなるといくつかの料理屋は、「白湯麺を始めました」という看板が出る。ある年寄りがこんな話をしてくれた。

 時は清の時代。安徽の鳳陽は日照りに見舞われたので、多くの人が難を逃れるためふるさとを離れたが、その中に中年の張さん夫婦が子供を連れ蘇州に逃れ、楓橋の近くで藁葺き屋根の小屋を立て、麺を作って売り、なんとか家計を立てていた。売っているのは「陽春麺」という具なしの安い麺で店はかなり小さがったが、麺には腰があるし、うまいというので働き者の夫婦が営むこの店は客から喜ばれた。そして2年が過ぎて暮らしもよくなり、いくらかたくわえができたので、夫婦はレンガ造りの家を建て、店を少し大きくして、これまでの「陽春麺」のほかに、醤油味がする豚の角煮汁の麺である「紅焼肉麺 hong shao rou mian」を売り出し、これが人気を呼んだ。しかし、当時は、油、塩、醤油、お酢、米、小麦粉と肉などはすべて街中で買わなければならなかった。

 ある日、仕入れのため、張さんは天秤棒を担ぎ街中にきて小麦と肉を買ったあと、醤油はあとと思って、その足でこの日は縁日だという街角にあるお寺の近くにきた。そこには多くの出店が並んでいた。実は出かける前に妻から靴と子供の食べるお菓子を買うよう言われていたのだ。そして買い物しようと歩き始めた途端、道端から大きな泣き声が聞こえた。ふと見ると、ぼろぼろの服をまとった男が、近くにある鳥居に頭をぶつけて死のうとしている。気のやさしい張さん、早速それを止め訳を聞いた。その男の話によると、妻が前の日に子供を生んだので、友人から金を借りて、米を買って妻におかゆを食べさせようとここに来たが、近くで賭博をしているのを見た。

 「さあ、さあ!賭けた、賭けた!儲けようと思っている人は是非賭けてください。儲かるよ!一文がすぐに十文に。十文がすぐに百文に変わるよ。さあ、賭けた、賭けた」

 この呼び声を聞いた男は、自分も一儲けして多くのものを買い、妻を喜ばせようと思ってそこに行き、よせばいいのに持っている銭全部を賭けてしまい、いっぺんにすっからかんになってしまったのだ。これを悲しんだ男はこれじゃ妻と生まれたばかりの子供に合わす顔がないと、いっそのこと鳥居に頭をぶつけて死のうと思ったという。

 これを聞いた張さんは気の毒に思い、これからものを買わなければならないことをも忘れ、懐からお金を取り出し、周りで見物している人々に向かって叫んだ。

 「みなの衆!この人は一時の迷いから銭を持っていかれたんだ。家には子供を生んだばかりの妻が米のおかゆを食べるのを待っているんだ。私にはこの百三十七文しかないが、みなの衆!どうかこの男を助けてやってくれ。いくらでもいいから出し合って、この男と家族が生きていけるようにしようじゃないか!」

 この張さんの呼びかけに周りの人は応えた、こうしてみんなはそれぞれ四十文、三十文をと出し合ってなんと五百文が集まり、張さんはそれを全部男に渡したので、男は涙を流してみんなにお辞儀しその場を離れて行った。

 さて、こちら張さんはこれでほっとしたが、急にこれからまだ買い物があることを思い出した。が、懐は空っぽ。

 「あれまあ、これはいかん、大変なことになった。どうしよう。うちの母ちゃんと息子のものも買ってないし・・・、それに明日から紅焼肉麺(hong shao rou mian)はどうするんだ?こまったなあ・・」

 張さん、困り果てて呆然となったが、金がないのでは仕方がない。こうして張さんは、これまで買ったものを天秤棒で担ぎ、妻に叱られる覚悟をしてとぼとぼと帰途に着いた。

 さて、張さんは家についてから、妻が口をあける前にありのままを話した。

 これを聞いた妻は怒るどころかいい事をしたと夫を慰めたものの、明日からどうしようと困りだし、寝ている息子の顔を見ながら夫婦二人はため息をついた。

 こうして夫婦はその夜はなかなか眠れなかったが、夜明け近くになって妻が急に起き出し、手をたたいて言う。

 「おまえさん、いいことに気がついたよ。」

 「え?なんだい、なんだい?何に気がついたんだい?」

 「あのさ、もう天気も暑くなったことだし、お客さんは脂っこいものはあまり食べなくなったでしょう?」

 「そういえばそうだな」

 「だからさ。うちでは醤油が切れているんだから、豚の骨を煮た汁で薄い塩味のおつゆ作ってさ、それに茹でた麺を入れ、その上に煮た豚肉の薄切り、ねぎと生姜のみじん切りを載せてお客さんに出せば、かなりあっさりしてるから喜ばれるかもよ?」

 「そうだな、それも少し冷やして出せば、この暑い時に売れるかもしればないな」

 「そうしましょう、そうしましょう」

 ということになり、夫婦は早速起きだして、仕事を始めた。

 そして昼前に、店の前に「白湯麺を始めました」という看板を出した。これを見た道行く人々、なんだなんだ?白湯麺だとと面白がり、早速店に入ってこの「白湯麺」を注文した。

 「うん?この麺もうまいし、おつゆは軽く塩味がしてさっぱりしてるぞ!この暑いときにはもってこいだ」

 「おう、おかみさん、これはうまいね。もういっぱいくれよ」

 ということになり、このことが広がり、店は大いに繁盛。しばらくしてこの「白湯麺」はうまい麺だとして知れわたったので、多くの店では厨房人を来させてこの麺を食べさせ、挙句はこっそりと作り方を盗み学んだ。こうして「白湯麺」は夏の蘇州の食べ物となったわい。

 え?張さん夫婦?人が自分の麺の作り方を盗み学んだことには気にもとめず、この店はその後も繁盛し、夫婦は幸せに暮らし、一人息子も親の仕事をついで一生懸命働き、その後はいい嫁さんもらって子供をもうけ、張さん家族は幸せに暮らしたという。いいですな。

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