今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日のこの時間は、昔の本「子不語」から「夜半の女」と少数民族トン族に伝わる「間抜けなお化け」をご紹介いたしましょう。
まず最初は、「子不語」から「夜半の女」です。
「夜半の女」
趙天如は新安の町に住むある金持ちの屋敷で、泊まりこみで主の息子に学問を教えていた。
それは夏のこと。暑さに弱い趙天如は、寝起きしている離れの床の上で、団扇を扇ぎながら流れる汗を手でぬぐっていた。どうしても寝られないので起きて外に出た。少し散歩をと広い庭を歩き始め、屋敷の母屋からかなり離れたところに、壁で囲まれ庭のある部屋があったので、「ここは涼しそうだな」と思い、入ろうとして思いとどまり、そのままもとの離れに帰った。次の日、趙天如は主のところに行って、離れは暑いので涼しい部屋に泊まらせてくれと頼んだ。
「先生。部屋はありますよ」と主がいい、屋敷のものに趙天如をつれていくつかの部屋を見て回らせた。しか し趙天如は昨夜見たところがいいという。実は趙天如は屋敷の主にとっては恩人の弟子だったので、主は趙天如にはきついことはいえない。
「先生、あの庭付きの部屋はやめなさい。もっといい部屋に泊まったら?」
「いや、出来ればあの部屋に寝泊りさせてください。おねがいします」
これに主は困った顔をした。そこで趙天如が「何か、都合の悪いことでも?」と聞く。
これに主はしばらく黙っていたが、そのうちに考え直したのか言い出した。
「実は、あそこは私の妻が二年前に首をつったところでね。そのあとは家のものでも気味悪がり、あの部屋にはあまり近づかないようにしてるんだが・・」
「ええ?!そうでしたか。しかし、私にはかかわりのないこと。全然気にしませんから、あそこに寝泊りさせてくださいな」
主は趙天如がこんなにまで頼むものだから、苦い顔していう。
「先生、そりゃあいいですよ。でも、先生になんかあったからといって私の恩人に言いつけたりはしないでくださいよ」
「ご主人。ご安心くだされ。そんなまねは絶対にしませんから」
こうして趙天如は、夕方になってかの部屋に移らしてもらった。そして夕食の後、いくらかの酒で気持ちよくなった趙天如は、今夜は涼しいところでぐっすり眠れると思いかの部屋に入った。
案の定、ここは窓からは涼しい風が時々入ってくる。あまり気持ちいいので趙天如は、明かりをつけたまま蚊帳に入り眠りに落ちた。
どのぐらい経っただろう。趙天如が目を覚まし、のどが渇いたので、床の横に置いてあった水入れの水をうまそうに飲んでから、また横になったとき、部屋の梁の上でコトリと音がした。
「うん?何だ、こんな夜中に」と幼い時から肝っ玉の太かった趙天如は、黙ったまま何が起きるのかと見守ることにした。
すると、梁からきれいな花模様がある靴を履いた女が雲から舞い降りるように降りてきた。それに甕のようなものを抱いている。これに趙天如、体全体が凍りついたような気がしたが、それでも声を出さずに見ていた。すると女は、窓際に行って月を眺め、懐から櫛を取り出して髪を直した後、部屋にある椅子に座り、横の机にその甕を置くと深いため息ついている。そしてまた、梁の上に浮かぶように上がっていき、かの甕を梁の上に隠したあと下りてくると、今度はなんと趙天如の床に来て蚊帳を広げた。びっくりした趙天如が、うわっ!と声を上げたので、女は庭のほうに逃げていく。いったい何者だと趙天如は、その後を追ったが、竹林のところで女はふと姿を消してしまった。これはと趙天如がそこらをさがしたが、何もなかった。
次の日の朝、趙天如は主のところに行って昨夜の出来事を簡単に話した。
「どうもお騒がせしましたな。やっぱりでてきましたか。実は、あれが私の妻でしたな。賢く気の効く妻でした。・・・で、二年前の夏のことですが、当時、私は商いがうまく行かず、どうにかして儲けた金を妻に預けておきました。つまり、家のことは任していたのですよ。そして急にまとまった金が要るようになり、妻に金を出すように言うと、なんと金がなくなっているというのです。怒った私は、酒も入っていたせいか、余計なことをいってしまい、気の強い妻はそれが我慢ならず、なんとあの部屋で首をくくってしまったのですよ・・」
「そんな・・」
「いや、後から思えば、かなりむごいことを言ったものです。金をわざと隠して騙したなんてね」
「それは・・。で、その金はあとでみつかったのですか?」
「いや。で、妻が死んだ後、一人の女中が暇がほしいと、あたふたと実家に帰っていきましたが・・」
「ふんふん。わかった」と趙天如は昨夜、女が梁の上から一つの甕を下ろしてきて、また元に返したことを話した。
「え?梁の上に?」と、主は趙天如と共にかの部屋に行き、はしごを持ってきて梁の上にあがり、かの甕を下ろした来た。あけてみると、いつか儲けた銀貨が詰まっていた。それに中には、かの閑をもらって実家に帰ったという女中のものが入っていた。
しばらくこれを見つめていた主は、急に頭をがんがんと叩き、「私が悪かった!許してくれ!女中が金に目がくらみ、この甕を梁の上に隠したのだ!妻よ!すまん、すまん!許してくれ!」とその場に跪いてしまった。
と、その日の夜半、かの女子が趙天如の夢の中に現れた。
「先生、どうもありがとうございました。これで私も冥土にいけます。いま。先生が教えているのは私の生んだ子です。よろしくお願いしますよ」
女はこういって深々と頭を下げた。この日から、この部屋では何もを起こらなかったという。
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