今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
もう8月ですね。暑いときには冷えた肴で一杯やるのが一番。仕方ありませんね。この林涛は、酒好きで食いしん坊なものですから、いつもこんな話になります。
先日の酒の肴は、なす、豆腐ともんごうイカでした。
まずは、もんごうイカですが、きれいに下ごしらします。もちろん薄い皮もとりました。そして葱は3センチぐらいの輪切りにしてから縦にして千切り。生姜は薄く輪切りにしてから千切りにしておきます。もんごうイカを熱湯で軽く茹で、3センチ長さの千切りにします。それをボールにいれ、塩、砂糖少々、ときがらしとごま油を入れてかき混ぜ、更に切ってあった葱と生姜とたっぷり載せます。食べるときに簡単に混ぜればいいのです。
次はナスですが、ナスは皮をむいて3センチの輪切りにします。それを皿に載せ蒸します。出来たらそれをボールに入れ、しゃもじで細かくつぶします。そこへ、うまみ調味料、細かく刻んだにんにく、醤油、お酢とゴマ味噌をいれかき混ぜてお皿に盛ります。
今度は冷えた豆腐を使います。まず、ピータン二つは皮をむき、包丁で細かく切ったあと、適当なお椀に入れた冷えた豆腐の上にかけます。そしてごま油、塩をふりかけ、みじん切りにした生姜と葱をかけて箸で混ぜ出来上がり。
簡単ですが、暑い夏の酒のつまみにはいいですよ。酒はもちろん、中国の蒸留酒である「白酒」です。
皆さんは、暑い夏は何を肴に飲んでいるのかな?
この時間は、北宋時代の怪異小説集である「稽神禄」から小話を二つご紹介しましょう。
最初は「変わった居候」です。
江西の廬陵県に田達誠という人が住んでいた。かなりの金持ちだったが、けちなところはなく、常に近くの貧しい人々を助けたりしていた。
ある年の夏、田達誠が新城というところに建てた別荘に住んでいると、夜遅くに誰かが自分の寝起きしている部屋の戸を軽く叩いた。
「こんな夜中に?」と田達誠は、寝そべって読んでいた本を置き、「こんなときに誰だ?」と声を出した。
「少し頼みたいことがありまして」
「こんな夜中にくるなんて、あんたは人間かい?」と田達誠はいくらか不機嫌になった。この問いに相手はしばらく答えなかったが、やがて決心したように答えた。
「じ、じつは、私はこの世のものではありません」
「え?冗談はよせ!」
「いや、冗談じゃありません。本当に私はこの世のものではないのです」
「そんな・・」
「こんな夜中にたずねてきてとても申し訳ないのですが」
「そういわれても・・」
田達誠は恐ろしくなって黙ってしまった。これを察したのか相手はいう。
「私はこの世のものではありませんが、あんたに害を加えるようなことは決してしません」と言って相手は戸を開けて部屋の中に入ってきた。これに田達誠はぎょっとなったが、みると相手は普通の男でお化けには見えない。
「お邪魔します」
「い、いったいあんたは何者だ?」
「私は、竜泉に住んでおりましたが、家が大水に流されましたので、住むところがありません。どうですかな?お宅にしばらく住ましてもらえませんか?」
「冗談じゃない!この世のものでないものと一緒に住めるか!」
「大丈夫ですよ。悪いことは決してしませんから」
「そういわれても!そ、それにあんた、大水に流されたって言うけど、死んだのだろう?一度死んでしまえば、この世で住むところなどいらないのではないか?」
「実は、あの世に行く前に済ませておきたいことがありましてね。それに田さんは心が大きく、人助けの好きな方だと聞きました。そこでしばらくお宅に邪魔しようと思いましてね。田さん、安心してくださいな。決して悪いことなどしませんから」
そこまで言われた田達誠は幼いときから肝っ玉が太かったせいもあって、落ち着きを取り戻していた。
「そこまで言われるなら、仕方がない。しばらくはうちに住んでもいい」
「どうもすみません」
「で、どこに泊まりますかな?離れかな?」
「離れで結構です」
こういって男は黙って一礼すると部屋から出て行った。こうして、その男、つまりお化けはこの別荘の離れを借りることになった。
翌日、田達誠が書斎で書を楽しみ、詩を作っていると、誰もいないのに急に天井から声がした。
「田さんは、詩もたしなまれるのですか」
「え?」
「私ですよ。昨夜お邪魔しに来たお化けですよ。居候に来たお化けですよ」
「ああ。でも姿が見えない」と田達誠がいうと、お化けは姿を現し、かの男が田達誠のまえに出てきた。これを見て田達誠はびっくりしたようだが、すぐに筆をとり、何かを書き始めた。
これを横で見ていたお化け、「田さん、一緒に詩を作りましょう」といいだす。
「ええ?お化けも詩を?」
「私は生前、読み書きを教えていましてね」
「ほう。そうでござるか。ではやってみなされ」ということになり、お化けも筆をとり、しばらく考えてから紙に詩を書いた。みると面白い詩なので田達誠はうれしくなり、家のものに酒肴を書斎に運ばせた。家のものは主が昼間から酒を飲むというので怪訝な顔をしたが、酒肴を持って書斎に来ると、主が一人でしゃべりながら詩を作っていた。どうも田達誠以外のものにはお化けの姿が見えないようだ。もちろん、家のものは不思議な顔をして下がっていく。そして主が頭が少しおかしくなったのではないかを疑ったが、そうでもなさそうなので知らん顔をしていた。こうして午後になった。
「ところでお化けどの。あんたは私の名前を知っているが、あんたの名前は?」
「わたしですか?私はやがては行ってしまうもの。名前などどうでもいいじゃないですか。聞かないでくださいよ」
こういわれ田達誠も強いて聞こうとはしなかった。こうして数ヶ月が過ぎ、お化けは時にはいなくなるようで、数日は現れないことがあった。
さて、ある日、田達誠が書斎で本を読んでいると、お化けが出てきていう。
「田さん、実は大事な用事があるので、裏の部屋を三日間ばかり、お借りできないかな?」
「裏の部屋。ああ、あの大きな部屋は誰も使わんからいいだろう」
「どうすみませんなあ。で、これから三日は誰も裏の部屋を覗かないようお願いいたします」
「うん?どうして?」
「どうせ、私らお化けのすることですから、人間が見るとあまりよくないと思いましてな」
「うーん!なるほど。いいでしょう。私から家のものにいっておきましょう」
こうしてお化けはどこからか、とても大きい布を持ってきて裏の部屋の周りを覆ってしまった。これを見た家のものは、不思議がったが、主の田達誠が向こう三日は誰も裏の部屋に近づいてはならんというので、そうすることにした。
しかし、長い間田家に奉公していた女中が、面白がって主にだまって中を覗いた。
さて、四日後にお化けは田達誠のところに来て、ことはうまく終わったとお礼に来た。
「これは田さん、私のことははかどりました。すみませんでした」
「いやいや。どうせ、裏の部屋は使わんので役に立てたというのなら幸い」
「どうも。で、失礼なことを申しますが、お宅に長い間奉公している女中が、田さんの言いつけに逆らって裏の部屋を覗きましたよ」
「ええ?ほんとうかね?うーん。わかった」
「女中さんは、実はかなり驚きましたが、それより自分がやったことを田さんに知られるのを怖がって、これまで、そのとき自分の見たことを誰にもいっていないようです。ですからきついお仕置きは・・」
「ほう?そうでござったか。わかった」
そこで、田達誠はその女中をよんだところ、女中は誰も知らないと思っていたことが主に知られたので、青い顔をして主にあやまり、自分の見たことを話した。それによると、裏の部屋の中は、なにかおめでたいことがあるようで賑やかだったが、中にいる人を見ると、それぞれ恐ろしい顔をしていたのでびっくりしたという。これを聞いた田達誠は、どうして男のお化けは怖い顔をしていないのかと首をかしげた後、まあいいやと思いながらこの女中をひどく叱り付け、自分の見たことを人に言うではないと念を押して下がらせた。
それから一年がたったある日、男のお化けは長い間お世話になったと礼をいい、屋敷を離れていった。
数日後、田達誠は商いのため広陵に出かけたが、なかなか戻らないので、家のものはかなり心配していると、夜中にかの女中の部屋の窓を叩く音がしたので女中が起きてみると、窓の外から「お宅の主人は無事だから安心しな」という声がした。しばらくして女中が恐る恐る部屋の外に出てみると誰もいないかわりに、手紙みたいなものが落ちていたので、女中はそれを拾い、その足で屋敷の番頭の元へ行って手紙を渡した。
こんなときにと番頭が手紙を開けてみると、それには、主人の田達誠はいま揚子の町で妾と住んでいるから安心しろ。それに自分はいたずらして、その住まいの離れを燃やしたと書いてある。こうして家のものは安心した。
それから数日後、田達誠は新城の別荘に帰ってきたが、その日の夜、応接間の方で音がするので、これに目を覚ました田達誠が起きて行ってみると、部屋の真ん中に袋が落ちている。何だ?これは?と田達誠が中を明けてみると、銀塊がたくさん入っており、一通の手紙が添えてあった。それには、この金は自分は居候になっていたときに、ことを済ませながらまじめに稼いだ金で、お礼だから受け取ってくれとある。そこで田達誠が次の日に男のお化けが元いたという竜泉に言って細かく調べてみたが、そんな男はこれまでいなっかったらしい。うん?
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