今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
みなさんは、中国の少数民族であるトン族をご存知でしょうか?トン族は人口が約250万。中国は中南部と西南部にある湖南省、貴州省と広西チワン族自治区という三つの省境に主に集まり住んでいます。
ところで、トン族が集まり住む地区にはいろいろと変わった建物があることで知られています。で、その建築技術の特徴を最も現しているのが橋で、それは風の雨の橋と書く「風雨橋」です、この種の橋は、屋根付きの長い廊下で出来ていて、雨や風を防ぐことが出来るので、この名が付いたということ。特に三江の程陽にある風雨橋は国宝に指定されているとのことです。
そこで、今日のこの時間は、まず、このトン族につたわるお話「風雨橋」、それからコーラオ族のお話「虫食い祭り」をご紹介いたしましょう。
最初は「風雨橋」
時はかなりむかし。人々がまだ平原に住み付いていないころ。トン族は多くが山間に住んでおり、一つの村に十幾つもの家族が暮らしていたという。
ある村にプカという若者がいた。プカはペーカンという娘を妻に迎え、むつまじく暮らしていた。それにペーカンはきれいなことから橋を渡るときなどは、川魚たちが一目見ようと自ら飛び跳ねたという。
ある日の朝、プカ夫婦は西山のふもとに働きに行く帰りに橋を渡り、橋の真ん中に来たとき、不意に大風が吹きだした。舞い上がったほこりが目に入らないようにとプカは手で顔を覆ったとき、悲鳴が聞こえたので、あわてて振り向くと、なんと妻の姿がない。すると「ドボーン」と何かが川に落ちた音がしたので、これは大変と、プカは橋の欄干から川面を見たところ妻が何者かに引っ張られ川底に沈んでいく。そこで自ら川に飛び込んで必死になって妻を捜した。しかし、どんなに探しても見つからない。そこで岸に上がって村人を呼んでみんなで探したが妻はいなかった。
実は、この川の底には、これまで数千年も生きているいうカニの化け物がいて、このカニがペーカンの美しさに見とれ、彼女を掻っ攫って行ったのである。
カニはペーカンを川底に連れて行くと、不意に美少年にかわり、自分の妻になれと言い寄る。ところがペーカンがこれを断り、自分を襲おうとした美少年をひっぱたいたので、怒った美少年はパッとカニの姿に戻り、恐ろしい声を出してペーカンを脅かした。
ところが、この怒り声が大きすぎ、なんとかなり離れた川上に棲んでいた花模様の竜のところまで聞こえた。
「何だ?今の声は!?」と竜は気持ちよく寝ていたところを起こされたので機嫌が悪かった。そこで人に迷惑をかけるのはどこのどいつだと怒り出し、川底にある洞窟から出てきた。竜は先ほどの声がした川下のほうにもぐって泳いで行ったので、陸からは川面に大きな波が立ち、その波が自分で進んでいくように見える。やがてかのプカ夫婦が渡った橋の近くまで来ると、壊れかけた橋の近くで人間どもが何か騒いでいる。
「うん?どうしたんだ?」と竜が川面から大きな顔をだしたので、岸辺にいた人々はびっくり。みんな逃げ出し始めたが、一人の年寄りがいう。
「皆の衆、この竜はわしが若いときに見たことのある。これまで悪いことしとらん」
これを聞いて村人たちは恐る恐る戻ってきて、この竜にプカの妻を捜してもらってはと言い出す。これに年寄りはうなずき、声を大きくして竜に言う。
「竜さんよ!わしらの村のプカの妻が何者かにさらわれた。すまんが、あんたなら探せるだろう」
すると竜は人間の言葉がわかるのだろう。首を縦に振ると川底にもぐっていった。
人々がこれからどうなるかと固唾を呑んで見守っていると、川面に渦巻きができ、そのうちに大きな波が立ち始め、渦巻きの真ん中から黒い煙みたいなものが上がった。
「なんだ?なんだ?」とみんなは思わず後ずさりする。
すると、ボコボコという音がした後、かの花模様の竜がぴゅーと空中にのぼり、またドボーンと渦巻きの真ん中に頭から落ちていった。こうして大波が立ち、今度は黒い何かの塊が出てきて、川下のほうに流れていく。すると竜が浮かび上がり、宙に舞い上がってそれを追う。
岸辺のみんなは怖い顔して、それを追いかけどうなるかと見つめる。
すると黒い塊がふと大きなカニに変わり、二本のはさみを振りかざし、竜に立ち向かいながら、近くの崖によじ登ったところを、竜がおきな尻尾でカニを川に叩き落した。それでもカニは必死になってまた崖に上り逃げようとする。しかし、また竜に叩き落された。これが何回も繰り返され、カニはもうくたくた。そこでカニは崖のぼりはやめて、今度は近くの竹林に逃げ込んだ。すると竜は、川水を一気に吸い込むと、竹林に向けて吹きかける。その勢いはすごいもので、竹はばたばたと倒れ、カニはまたも川に落とされた。そこでカニは最後の力を振り絞り川底にもぐっていった。もちろん、竜はそれに続きもぐる。そのとき、地響きが起きたような揺れをみんなは感じたが、しばらくして静かになった。やがて竜が川から出てきて、岸辺の人たちを一目見たあと、川上のほうへゆっくりと泳ぎだし、そのうちに姿を消してしまった。
しばらくすると、川面に誰かが浮かび上がり、声を出して助けを呼び求めているようだ。みるとカニの化け物にさらわれたプカの妻ペーカンであった。そこでプカがあわてて川に飛び込み妻を救った。
「プカ!私が助かったのはあの花模様の竜のおかげよ」
これを聞いたプカとみんなは竜に感謝し、川上の方にお辞儀した。
このことはすぐにここら一帯に伝わり、人々は人間を助けた竜を記念するため、今度は大きく、長くて屋根が付いた廊下のような橋を作り、廊下を支える何本かの柱に竜の模様を彫りこんだ。そして橋が出来上がってみんながそれを祝っていると、不意に空の雲が一匹の竜のような形になり、ピカピカ光ったので、これにみんなは大喜び。もちろん手を合わせて感謝した。
その後、ある人はこの橋を竜が帰るという意味の回竜橋と呼び、ある人は人間を助けた竜は花模様だったので花橋と呼んだ。しかし、この橋は屋根が付き、釘を一本も使っていないのに頑丈に出来ていることから、そのうちに風と雨をよける役割を果たすことから風雨橋と呼ばれたわい。
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