今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は、清代の書物「客窓閑話」という本から「賢い少年」というお話と同じく清の「子不語」から「起上り小法師」をごしょうかいしましょう。
まずは清代の書物「客窓閑話」という本から「賢い少年」です。
「賢い少年」
いつのことかはっきりわからん。ある少年がいて、家は貧しく、母親が床に臥しており、病を治すために父は商人から借金して薬を買っていたが、その甲斐もなく、母親は少年が七歳のときに亡くなった。しかし、借りた金は返さなければならず、どうにもならない。こうして父は途方にくれ、そのうちに病に倒れた。しかし、商人は、月に何度か借金を返せといいに来る。そこで父はいつかは何とか返すからそれまで待ってくれと頼む。これを聞いた商人、仕方がないので渋い顔して必ず返すようにと念を押して帰っていく。
それから数年たったが、まだ借金は返せないので、商人はいらだち始め、言葉遣いもいくらか荒くなり始めた。このころ、十幾つになっていた少年は、いつも閑があれは近くにある塾の窓の外から、塾の先生の言うことをしっかり聞き、頭もよかったので、塾生でなくともそれに負けないぐらいのものを覚え込んでいた。こうして、少年は我が家のことの仔細がいくらかわかるようになり、商人に怒鳴られている父を見て悲しみ、自分でも何とかしなくてはと思うようになっていたのだ。
その日、少年は昨夜から考えていたことを父に話した。
「父さん、おいらが返す金を何とかするから」
「うん?なにをいう!お前はまだ子供だ。大人のことなどわかるもんか!」
「わかるよ。とうさん、なんとかしないと、このままではどうにもならないよ」
「そんなことはわかってる」
「だったら、試においらにやらしてくれよ。たのむよ。おいらだって父さんがいつも叱られ、床の上で嘆いてばかりいるのをみてつらいんだよ」
「お、おまえ・・」
「とうさん、これがうまくいかなくても、おいらは子供だから人に大げさに言われることはないよ。だから、家に残ったお金をつかわしてよ」
これを聞いた父も、このままではどうにもならず、息子が何とかしてくれれば、いくらかよくなると考え、それにどうせ子供が考えたことをやるんだろう。事がうまくいかなくても、大騒ぎはされんとおもい、真剣な息子の顔をじっとを見てからいう。
「しかたがない。お前の父さんにはどうにもならなかった。息子や、お前の気持ちはわかるぞ。家にはまだ少したくわえがあるから、お前はそれを持ってお前の考えどおりやれ。しかし、うまくいかないと思ったら、すぐにやめるんだぞ」
「うん。とうさん、わかったよ。おいらの話を聞いてくれてありがとう」
ということになり、息子は父に言われたとおり、屋根の裏から家の全財産ともいえる一袋の銅銭を懐に、次の日、役者をしている隣の男を訪ねに行った。
金を受け取った役者は、いったい何をするんだと聞くと少年が言う。
「おじさん、いいかい。明後日、おじさんは学問の神だという魁星に化けるんだよ」
「おれが魁星に化けてどうするんだ?」
「明後日、うちが金を借りている商人がうちに来るから、おじさんは魁星に化けて、商人がおいらの部屋に入ったときに出てちょうだいよ。そしてすぐにおいらの後ろに隠れ、商人が帰れば、おじさんの役目はそれで終わりだよ」
「なんだい?それだけかい?それなら簡単。おじさんに任しておきな。うまく魁星に化けてみせるから」
こうして少年はうちに帰り、父に言う。
「明後日にあの商人がきたら、父さんはこういうんだよ。息子が遠い親戚の家に金を借りに行ったところ、親戚は金を貸してくれると答えたが、いつその金を届けに来るかわからない。詳しいことは息子に聞いてくれとね。そして父さんは、大声でおいらを呼ぶんだよ。そのときおいらは大声で本を読んでいて、父さんの呼び声は聞こえなかったふりをするんだ。そうすれば、あの商人はきっとおいらの部屋に来るから、そのあとはおいらにまかしてよ」
これに父はしばらく考えていたが、息子が幼いときから賢かったのを思い出し、何も言わずにうなずいた。
こうして翌々日になった。案の定、かの商人がこの日も来たが、これに少年の父は、少年の言ったとおりに答えた。
これに商人は首を傾げたが、実を言うと以前からこの少年にいくらか気があったのだ。というのは少年はかなりの男前で、賢そうであり、それに自分がこの家に来たときは、貧乏人の息子としてはいつも行儀がよかったからだ。
「息子や!息子!旦那がお前に聞くことがあるので、出てきなさい」
この少年の父の呼び声に商人が少年の部屋を見たが、中からは、ただ本を大声で読む声だけが聞こえ、少年は出てこない。
「うん。学問に励むとはいい心構え。なかなかよい子じゃな。ではわしが行って見よう」と商人は自ら少年の部屋に行った、そこで戸を開けたところ、中ではピカピカ光る金のかぶとをまとい、青い顔をしたものが、大きな筆を手に少年の横に立っていた。びっくりした商人は戸を閉めてしまったが、あれは確か学問の神の魁星だと気がついて、また戸を開けたところ、魁星の姿はなく、そこには少年だけが本を声を出して読んでいるばかり。これに商人は顔をしかめていたが、少年はそれに気づかないふりをして本を読み続けた。そこで商人は何かを悟ったのか、戸を閉めて少年の父に言う。
「いやいや、驚いたわい。あんたの息子さんは、只者ではない。どうじゃ。息子さんをここへ呼んでもらえないか?」
こうして父は少年の部屋に行って少年を連れてきた。そこで少年はいつもよりは行儀よく挨拶し、商人のいろいろな問いに立派に答えたので商人は一度に気に入ってしまった。そして少年の父に言う。
「あんたにはこのようなすばらしい息子がいるのですぞ。息子さんはいつかは出世するに違いない」
これを聞いた少年の父は何のことがすぐにはわからず、「え?どういうことです?」と聞き返す。
「息子さんには神は着いているので必ず出世しますよ。どうです?実はわしにはあんたの息子さんよりいくつか小さい娘がいましてね。これはわし一人の考えだが、あんたの息子さんをいつかは娘婿にしたいのだが・・」
これに父は驚いた。
「何ですって?うちの息子をあんたの娘婿に?」
「そう。もし、あんたがうんといえば、これでことは決まるというもの。それにわしの娘婿になれば、これまでの借金は返さなくともいいことになる。ま、わしの娘婿になるのはあと数年後のことだが、いまから、わしが確かな先生に頼んで息子さんに学問をやらせましょう」
「ほんとうですか?」
「もちろん。うそはつきません。それに息子さんがわしの娘婿になれは、わしの娘も幸せになれるというもの」
これに少年の父は大喜び。その場で息子に商人に対し娘婿としての挨拶をさせた。もちろん、商人も喜んで帰っていった。
そして翌日、商人は仲人を少年の家に送り、そのあと少年と父を自分の屋敷に迎えて住ませ、確かな先生を雇って少年に学問をやらせた。こうして少年はめきめきとその賢さをあらわし、のちの官吏になる試験に最もよい成績で受かり、そのあと商人の娘と夫婦となった。そしてその後は大役についたという。
もちろん、少年の父は息子も言うとおりにしたおかげで、その後は何不自由なく暮らした。
そう、かの娘思いの商人も自分が睨んだとおり、娘婿が出世したので同じように喜び、のちの商いもうまく行ったという。
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