「なにをいってやがる。はやく、昨日作ってあまった豆腐をこれと同じようにするんだ!さあ、これでやってくぞ!」
こうして親子三人はその日からこの豆腐を作り始め、次の日に小屋においてあった甕の豆腐を売り出した。もちろん、はじめのうちは、みんな怪訝な顔して見ていたが、毒じゃないから味見してみよと言われて味見したところ、本当にうまいので、すぐに売れてしまう。そこでまだあるかと客が聞くので父は、いまはないけど、数ヵ月後には沢山出来るから、是非買いに来てくれと客に言う。こうしてそれから数ヶ月がたったある日。親子三人の店では例の豆腐を多く売り始め、また娘は父と共にこれを町で売ったので、そのおいしさは多くの人が知るようになり、この豆腐の塩酒漬けは評判になった。もちろん、このときから親子三人の暮らしはよくなり、のちにおとなしい若者がこの家に婿入りし、この豆腐作りを継いだとという。
さて、当時、朝廷には陳宏謀という四塘生まれの大官がいた。この陳宏謀、ある年に四塘近くまで宮廷の用事で来たので、ついでに久しぶりにふるさとに帰った。そしてこの横山村の豆腐のことを知り、自ら口にしてそのうまさがわかり、皇帝への土産としてかなり買い込み都に帰った。
で、宮殿に住む皇帝は毎日のいわゆる山の幸と海の幸に飽きていてので、いつも厨房にかわったものを作って出せと命じていた。このことを以前から聞いていた陳宏謀は都に着くと翌日、皇帝の世話をしている宦官に自分は故郷から珍しい食べ物を持ち帰ったので、皇帝がお粥や米のご飯を食べるとき、漬物として出してくれるよう頼んだ。もちろん、金をその宦官に渡すことも忘れない。そして翌日、この宦官は皇帝の朝餉にこの豆腐を出させた。
「うん?これはなんじゃ?これまで見たことがないが?」
横で控えている宦官に皇帝が聞く。
「はい。申し上げます。それは豆腐を塩と酒で漬けたもので、桂林近くがふるさとである陳宏謀どのが、皇帝さまに是非味わってもらおうと故郷から持ってこられたものでござります」
「ほう?あの陳宏謀がな。で、ここまま食べるのか?」
「は、そのままでもよろしいのですが、話ではお粥などを召し上がられるときに漬物とされれば、とてもおいしいということでございます」
「うん。粥などを食べるときの漬物とな。では、試してみるか」と皇帝はお粥を一口食べたあと、豆腐を少し口に入れた。
「うん!うん、うん!これは粥に合うのう。うまい、うまい。」
「それは結構なことでございます。これで陳どのも遠くからそれを持ってきた甲斐があるというもの」
「うん。これがあれば、粥などは普段より多く食べられるわい。そうじゃ。奴はまだ帰京の報告をしておらんな。明日にでも陳宏謀を呼べ」ということになり、翌日、陳宏謀は皇帝に今度の南方での見回りの状況を報告した。それが終わって皇帝はふとあの豆腐のことを思い出した。
「ところで、宏謀よ。そちが持ち帰ったあの豆腐の漬物、粥と一緒に食べた。うまかったぞや」
「はは!これはこれはありがたき幸せ。皇帝さまのお口に合ったようで、何よりでございます」
「で、あれはなんと申すのかな?」
「はい、はい。あれは・・・」と陳宏謀は、四塘にある横山村の豆腐屋が考え出したものだと言おうと思ったが、農村で出来たものとは言えず、これは桂林特産の「豆乳腐」だと答えた。ここでいう「豆乳腐」とは、そうじゃな、いまの言葉で豆腐チーズという意味かな?。
そこで皇帝は桂林から毎年、この「豆乳腐」を都への貢物とするよう命じた。
ところが桂林の人々は、当時の腐敗した朝廷を憎んでいたことから、「乳腐」の「腐」、つまり、腐るという字を乳の前にして「腐乳」とよび、このときから桂林の「豆腐乳」は名物になったわい!
そろそろ時間です。来週またお会いいたしましょう。
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