すると、徳利がひとりで空中に浮かび、酒を飲む音が聞こえた。そしてそれまで黙っていたアカシアの樹がこたえた。
「これは、丁寧な人間どのでござるな。わしの下で寝ていたのはあんただったのか?ま、わしは気にしておらんよ。ところで、あんたはわしにどうしろというのだね?」
「実はわたしは、道教を信じており、これまで良き師にめぐりあえませんでした。そこであなたさまについていろいろ学びたいのですが、お願いします。そのお礼は必ず忘れませんから」
こういって江さんは、また新しい徳利をゴザの上に置いた。するとアカシアの樹は答える。
「そうでござったか。わしは修行が浅いのであんたには何も教えることは出来ない。そこである先生をこれから探しなさい。その方は仙人じゃ、荊山にいてな。ま、陸にいなけれは、水の中にいるはずじゃ。その先生に教われば、きっといいことがあるにちがいない。」
「あの潤オ。仙人ですね」
「うん。しかし、今日ここでわしがこんなことをあんたに言ったと人にもらしてはいかん。これもあんたの真心に打たれたので教えただけのこと。もしあんたがこのことを人に漏らせば、わしは罰を受けることになる」
「わかりました。絶対に人にはもらしません」
こうして江さんはアカシアの樹に礼をいうと、翌日、支度をしたあと一人で荊山に登った。それは大変だった。幾つもの峰を越え、多くの川を渡り、数日かかかってやっとのことで仙人を捜し当てた。そこで江さんは土下座して弟子にしてくれと頼んだ。
「うん?お前が誰からわたしのことを聞いたのじゃ?うそをついてはならんぞ」
「はい。実は霊仙閣のちかくの大きなアカシアの樹が教えてくれました」と江さんはありのままを話した。これを聞いた仙人は怒った。
「なんということだ!奴が私のことを教えるとは!今から行って懲らしめてやる」
これをみた江さんは必死になって謝った。
「先生、どうかあのアカシアの樹を許してあげてくだされ」
「いや。いま奴を懲らしめないと、これから弟子にしてくれというものがあとを絶たんようになる。それにお前はなんだ?わたしに何を学ぶというのだ?お前は何が出来るか言ってみろ」
「は、はい。私は道教を信じており、笛が吹けます」
「では、ここで吹いてみろ」
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