今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は唐代の詩人李白にまつわるお話をご紹介しましょう。
ご存知だと思いますが、李白は字(あざな)は太白といい、号は青蓮居士ですが、彼は大の酒好きで、酒を飲めば飲むほどすばらしい詩が出来るということですね。いいなあ!この林涛なら酔っ払って寝てしまいますが。で、今日は。その酒がないと困るというお話です。題して「太白の居酒屋」
ではまいりましょう。
「太白の居酒屋」(太白酒家)
ある年の初冬は寒さがきつかった。采石磯という磯の岸辺につけた大きな舟に住む李白は、いつも町の居酒屋で酒を飲んで寒さをしのいでいた。もちろん、寒くなくとも酒を飲むのだが、寒いこともあって飲む量が多い。で、この居酒屋は魯というオヤジが開いたものだが、このオヤジ、いつもニコニコしているものの、少しも損はしたくないと考えている。
この日、李白が店に入ってくると、もたれ椅子で休んでいたオヤジがひげをなで、目を細くした。
「この客は李白という都ではかなり知られた詩人だというが何かわけがあり、この遠く離れた采石磯にきやがった。ここでは商いしているわけでもないので、この数年で酒を飲む金もたいてい使い果たしてしまっただろう。おかげで付けが溜まったワイ。ふん!ただ飲みされてたまるか」。
実は数年前、李白がこの采石磯に来たとき、オヤジは李白が上等な酒を注文したので、きっと金があると思い、その後慇懃にもてなしていた。その上、店の若い手代は李白に好意をもち、いつものように酒を多めに出し、おまけに帰りに李白のもって来た徳利に酒を入れて、この分はただで持って帰らせていたのだ。この日も、手代はそうしたので、オヤジはもう我慢できなくなり、手代をにらみ、李白に近づき言った。
「お客さんよ、うちは小さな店でしてね。酒もたいしたものはなく、都で暮らした方の気に入る酒はもうないんですよ」
これに李白、チラッとオヤジを見て懐から銀五両に値する銀錠を出し、オヤジに放り渡した。オヤジはびっくりしてこれを受け取り、急にニコニコ顔になり、「これはこれは、李白さま。失礼いたしました」といい、手代に早くおつりを渡すよう叱りつけた。
「つりは・・・。そうだ、付けを払い、余った分は次に来るときの酒代としろ」と李白がいう。
「へい、李白さま。わかりました。毎度ありがとうございます」とオヤジはこれに答えた。
さて、それからも李白はこの居酒屋に通いつづけ、またも付けが溜まったので、考えたオヤジは手代に酒を水で薄めて出せと命じた。が、手代がいやな顔するので、オヤジは怒って手代をやめさせ、自分で李白に出す酒を水で薄めて待っていた。
と、その日、李白が居酒屋に入ると愛想のよい手代がいない。うん?と首を傾げたが、黙っていつもの席に着いた。すると、オヤジが自ら酒を持ってきて、にやにやしながら「どうぞ」と酒を置き戻っていく。李白はこれにまたも首を傾げたが、それでも黙って杯に酒をついて口に運んだ。
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