中国では、古くから占いや風水の文化があります。5000年前の商の末期、周の初期、易経(えききょう)という占いに関する古書がありました。シンボルを使って状態の変遷や変化を予測する古典で、陰と陽という二つの元素の対立と統合によって、世の中の変化の法則を探り、古代中国の哲学と宇宙観にもつながると見られています。風水や占いの文化も古代の中華文化を研究する重要な一環とも言えます。むしろ、今現在にも人々に影響を与えています。
風水(ふうすい)は、古代中国の思想で、都市、住居、建物、お墓などの位置の吉凶禍福を決定するために用いられてきた、気の流れを物の位置でコントロールする思想です。中国では、「地相」、「堪輿(かんよ)」とも言います。
中華文化には「気」が重要視されていますね。太極拳など、カンフ―にも「気」がよく強調されていますし、漢方医学や中国人の養生にも「気」がすごく大事にされていますね。しかしこの「気」って、いったいどんなものなのでしょうか。中国の古代では、世の中は「陰」と「陽」という対立した二つの元素からなると見られました。陰・陽の統合・調和から生まれたエネルギーは「気」と言い、人間の動きや、世の中の物事を順調に運ばせる精神的な力と見られています。このような精神的な力と地理や位置との微妙な関係を計るのが、「地相」、「風水」ということでしょう。
風水は陰陽の統合を求め、人間と環境の調和を図るものですから。このような考え方は中国ならではのものではなくて、例えば、エジプトのピラミッドや、メキシコのマヤ文明にも、方位を計って建物を建てたり行事を行ったりする慣わしがあったそうです。日本では今も、インテリア風水が流行っています。では、いま中国では、人々は風水のことをどのように見ていますか。
実は、いま、中国で「風水」と言えば、やっぱり賛否両論があります。賛成者は、「風水」は地理学、生態学、景観学、建築、倫理、美学を一体化した総合的な中華文化だと見ていますし、反対者は「風水」なんて、それは反科学的な理屈だと見ています。目に見えないことだから認識には微妙な差があります。風水に拘りすぎると、生活や人生がそれに振り回されるような気がします。
特にいま、中国では不動産の発展が好調で、人々は住宅を買う場合、方位や内装など、やはり風水の考えに影響されがちですよ。風水の良い住宅なら、価格も次第に上がっていきます。インターネットでは風水の掲示板もありますし、一部の文化コンサルティング会社も風水のアドバイスをサービス項目として出しています。さらに、2005年、南京大学は中国初の「建築風水文化」教室を設置しました。講義には風水の哲学に関する「易学」や、建築風水学、古代天文学、建築風水と環境などがあります。学費は1万9680元で、試験に合格すれば、「建築風水文化執行官」という資格を得られるということです。
とにかく、古くから、中国人が風水に対する研究や応用を一度も中断したことはありません。特にここ20年、風水は世界的にもホットな話題となりました。西側の工業化時代は科学技術によって社会の繁栄と発展を実現した一方で、多くの社会問題を招きました。例えば環境問題やエネルギー問題など、常に人々に不安をもたらしています。これらの問題を解決するために、西側文明だけでは解決できず、多くの人々は東洋文化に目を向けるようになりました。
風水には、東洋人が人間と環境の調和・共存への配慮や知恵が凝縮されているからですね。科学技術で説明できない一面もあって誤解されますけど、「天人合一」の思想はこの時代にこそ、必要です。科学なのか、迷信なのかは別として、風水に提唱された環境への配慮はいまの時代に欠けていますね。何といっても、人間の活動は自然に敬意を持って、環境に配慮してすすめなければなりません。人間も自然の一部であることを忘れてはいけません。環境を守ることは自分を守ることですよ。
今、世界的にも不安定な心理状態が拡大していますし、人々は自信を失いやすいようです。心細い時、何か精神的なより所がほしくなりますね。これも風水ブームが起こった理由の一つに挙げられます。ただし、風水などの占いはただ人間が世界を予測したり探ったりする方法の一つです。判断や選択あくまでも自分で考えて答えを出すべきだと思います。回避したり、信じてばかりいるのも良くないし、自分なりの判断が必要ですね。世の中は神秘で繊細ですから、好奇心を持って未知への探求を続ければ、新たな発見につながりますね。(10/06「イキイキ中国」)
| ||||
© China Radio International.CRI. All Rights Reserved. 16A Shijingshan Road, Beijing, China. 100040 |