7月23日、死者40人を出した北京―福州間高速鉄道の事故を受け、これまでの1週間、中国政府、鉄道省および鉄道関連企業は一連の安全対策に乗り出しています。中国の高速鉄道を取り巻く環境にスポットを当てます。
■国務院、高速鉄道安全大検査の実施で通達
まず、8月10日に開かれた国務院常務委員会は事故発生5日後に発表された調査チームと専門家チームの人員を再構成すると共に、拡大したことを発表しました。これまでのメンバーには、鉄道省次官および鉄道省安全監督局の責任者の名前もありましたが、鉄道当局関連のこの2人の名前が見えなくなったことが大きな特徴となっています。
続いて、「高速鉄道安全大検査の実施」に関する国務院の通達が出されました。
通達は、高速鉄道の安全上の隠れた危険性に対する全面検査と徹底した安全対策、幹部・職員の安全意識の強化、安全管理に関する制度や仕組みの整備を強く訴えています。
検査対象は、現在時速200キロ以上で運行中の高速鉄道および建設中のプロジェクトのほか、10ある全国各地の鉄道局、車両や信号設備メーカーの中国南車集団、中国北方機車車輌工業集団公司、中国鉄路通信信号集団公司なども含まれています。
通達によりますと、大検査は8月中旬から9月中旬にかけて行なわれ、検査方法も公開して行われるものと秘密裏に行なわれるもの、現場での立ち入り検査と資料の審査、全数調査とサンプル調査などが含まれているというものです。
■鉄道省、スピードの全面的引き下げ
中国政府はさらに、在来線を含めた鉄道の運転速度の全面的引き下げ、および高速鉄道の新規承認凍結を決定しました。
盛光祖鉄道相は10日行なわれた記者会見で、「中国の高速鉄道は運行の初期段階にある。安全管理面での経験を積むために、運転速度を引き下げる」と発表しました。それによりますと、設計最高時速350キロと250キロの路線に対しては、運転速度の上限をそれぞれ300キロと200キロに落とし、また、最高時速200キロの在来線では上限を160キロに定めるということです。これと同時に、各線路の運賃は5%前後下げるとしました。
これを受け、中国全土の鉄道ダイヤは8月中にも再編成が行なわれます。前回のダイヤ調整は7月1日に行なわれたばかりですので、2ヶ月足らずで2回も調整するというのは、きわめて異例な処置です。
中国の鉄道のスピードアップは1997年4月にスタートしたもので、これまで14年ほどの間に、6回にわたって大幅なスピードアップを行ない、それにより、旅客輸送と貨物輸送のキャパシティがそれぞれ18%以上と12%以上増えました。
在来線も含めた今回のスピードダウンに対して、大きく2種類の意見が見られました。
肯定的な見方は、「安全確保のために、スピードを落とさなければいけない。鉄道の関連システムにはまだ信頼できないものもあるため、多少効率を犠牲にするのも仕方のないことだ。何事も速さを求めたがるというものの考え方を改めなければいけない」と訴えていますが、対して、消極的な見方は、経済成長のスピードへの影響に憂慮を示しました。
「鉄道の運行効率が悪くなり、収益性も厳しい試練にさらされるだろう。スピードダウンがもたらす連鎖反応は鉄道省そのものの経営だけでなく、沿線地区の経済発展にも影響を及ぼす。また、高速鉄道産業チェーンや産業全体の競争力に影を落とし、ひいては、中国鉄道の世界における位置づけにまで影響を及ぼしかねない。それに、スピードが速かったから事故になったかどうか、科学的に論証する必要もある。とりわけ、これまで10年あまり安全に運行してきた在来線のスピードまで落とすのは、もったいないことだと思う」
さらに、安全確保する面での問題の本質と対処にこそ力を入れるべきと厳しい意見も上がっています。
「運転速度の引き下げは、合理的な判断ですが、問題が管理・運用面にあることは明白なので、真の問題に取り組まなければ、たとえ時速100キロまで速度を落としても衝突事故は起きるだろう」
■「中国北車」、高速鉄道車両回収へ
なお、列車速度の引き下げ発表と同じ日、車両メーカーの動きもありました。
高速列車に使う車両を作る「北方機関車車両製造工業株式有限公司(中国北車)」は11日、故障が相次いでいた車両「CRH380BL」の回収を決めました。故障の原因究明が目的で、対象となるのは54編成。「CRH380BL」はドイツのシーメンス社の技術をベースに作られた車両で、北京―上海間のほか、上海―杭州間、青島―済南間に使われています。
中国国内において、高速鉄道に使われる車両の回収はこれが初めてです。
これを受け、北京上海間の高速列車の運行本数は88本から66本に減らされます。
中国北車社はまた、安全上の理由から同型車両の出荷を停止していると明らかにしました。その発表したところによりますと、同社の子会社である「長春軌道」の製造したCRH380BL型車両は自動保護システムの誤作動による列車の遅延が起きており、しかも、その発生頻度は他の子会社が製造した同型の車両よりも高いということです。
中国北車はさらに、「故障の大部分は部品の欠陥によるもので、現場でのスピーディーな対処が難しい。このほか、北京上海高速鉄道は南北1318キロにわたっており、異なる気候帯を跨ぎ、夏の暴雨や雷、稲妻の激しい気候にもさらされている」などと説明しました。(Yan)
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