国際大手格付け会社スタンダード&プーアーズ(S&P)が5日、1917年から最上位の「AAA」(トリプルA)を保ってきた米国債の長期信用格付けをAAA(トリプルA)から1段階引き下げてAA+(ダブルAプラス)としました。これを受け、8日付の中国共産党の機関紙『人民日報』は、「世界経済の回復、求められるアメリカと欧州の政治的責任」と題した論説を掲載しました。
論説では、世界経済が「二番底」に陥入るリスクにさらされている中、西側諸国からの「中国へのほめ殺し」に警戒感を示し、「ここ数年、世界経済が困難に直面すると、西側諸国は危機を中国に転嫁しようとするか、中国を高く評価することで、中国に責任をとらせようとする。いずれの出方にも共通してみられることは、責任を逃れたいということである」ととしました。
論説はまた、今回の危機的状況は2008年のリーマンショックとの違いに注目して、その本質は政治的危機なのだと指摘しました。
「アメリカは債務危機にあえいではいるが、今年の経済成長は引き続き上昇傾向にある。……(中略)がけっぷちに来てしまったのは、世界経済そのものではなく、ワシントンの政治なのだ。ワシントンで起きたのは、経済危機だけではなく、それ以上に政治危機なのだ。これに先立ち、欧州で起きた債務危機が長く解決できなかったのも、欧州諸国とEUの政策決定の間の衝突および各国の国内政治の矛盾の表れでもある。今回、S&Pがアメリカ国際の信用格付けを引き下げたのも同じく、アメリカの政治の将来性への懸念から来ている」
さらに、アメリカと欧州に世界経済の成長に果たすべき役割を強く求めていました。
「アメリカの指導者が大局的観点から、世界が納得する財政赤字削減案と経済振興計画を早急に打ち出し、同時にアメリカおよびアメリカ国債に対する国際信用を効果的に維持する措置を講じて、アメリカに関わる世界各国の資産の安全を確保するよう求める」
一方、アメリカ国債の格下げにより、中国はこれから、外貨建て資産の目減り、輸出の縮小、輸入型インフレ圧力の上昇などを始め、多くの難題にぶつかっていると見られています。
中国社会科学院金融研究所の劉煜輝主任研究員は、「中国は米国債の世界最大の債権国であり、外貨準備の約3分の2は米ドル建て資産なので、今回の格下げにより中国の米ドル建て資産の価値が目減りする」という見通しを示しました。
また、業界関係者の予測では、米国は中国に市場のさらなる開放を求め、引き続き人民元切り上げの圧力を強めてくる可能性があります。また、自国経済を守るため、米国では貿易保護主義が台頭する可能性があり、税収の増加や貿易障壁といった手段で中国の輸出に干渉したり、輸出企業に圧力を加えたりする可能性も高まっています。
さらに、米ドルは世界で最も主要な貿易決済通貨であり、米債務危機が引き起こした新札の追加発行の動きにより、米ドルは継続的に下落し、米ドル建て大口商品の価格が継続的に上昇するとともに、原材料を大量に輸入する中国では、輸入型インフレ圧力が高まることが予想されると指摘されています。
米国債の格下げが引き金に、今後起こるだろう一連の動きに対して、関係筋は、中国はこれを輸出依存型発展モデルを転換させる機会としてとらえ、輸出への過度の依存を脱出しなければならないと強く訴えています。(Yan)
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