内蒙古にあるロシア族の故郷を訪ねて
内蒙古の最北端にあるホロンバイルのアルグン市の室偉は、ロシア族の里と呼ばれています。川の向こうにはロシアを臨めるこの地にロシア族の人、1700人ほどが暮らしています。
今日のクローズアップでは、室偉を訪ね、ロシア族の民族風情と豊かな文化をご紹介します。
古文書の記述によると、1000年以上も前の隋、唐の時代にすでに室偉では人々が遊牧、漁などをして暮らしていました。
1920年に中華民国がこの地に「室偉県」を置きました。19世紀末にはロシア帝国の貴族、資本家が中国での鉱山の発掘、商売のためにやって来ました。またロシアの農民たちも国の境を越えて、いつしか定住するようになりました。またロシア側からばかりでなく、中国の山東省、河南省、河北省の農民たちが金や、伐採、牧畜を求めてやって来ました。これは東北地方への農民大移動として、歴史にも残っています。そして二つの民族の婚姻が繰り返され、次第に漢族とロシア人の双方の血を持つ一群が形成されたのです。
室偉は自然に恵まれた美しい土地です。そればかりでなく、今もこの土地に色濃く残るロシアの生活の香りが多くの観光客を引き付けています。とりわけ人気なのは、「ロシア民族の家」と呼ばれる農村部観光コースです。
室偉に暮らすロシア族の家庭には独特な衛生観念があり、部屋の中は全てフローリングです。部屋を清潔に保つと同時に、部屋の中を明るく見せるためです。そして白く光る壁には、ロシア風の飾り物がかけられ、訪れる人を楽しませています。
この中でもとりわけ人々に知られている家があります。それが民宿「ナジの家」です。今日も観光客を迎え忙しそうです。経営者の代麗穎さんがお客さんを案内しています。
「さあ、こちらへどうぞ。あと2人ですね。こんばんは。お部屋の番号を覚えて下さいね。」
「ナジの家」の経営者・代麗穎さんは、漢族とロシア人の血を持つ「華俄后裔」の第4世代です。鼻が高く、目が少し落ち窪んだ彼女の顔はロシア人の顔そのもののようですが、彼女の口から出る言葉は完全な中国語です。山東省の人と同じような豪快な性格をもつ彼女は賢明に商売に励み、民宿の規模もだんだん大きくなってきました。
「民宿を始めたばかりの頃は知らない人を訪ね、旅行社を何軒もまわって営業しました。ここ数年は、お客さんのほうから足を運んでくれます」
ロシア族の典型的な家は「ムークーロン」と呼ばれています。代麗穎さんのムークーロンは現代風にアレンジされたものですが、伝統的なものはすべて丸木で作られます。石で基礎をつくった上に丸木を重ねていき、木と木の間には苔を詰めて風が入らないようにします。「ナジの家」の隣にはこの伝統的なムークーロンを見ることができます。なんと450年前に建てられた家です。そして今もここに代麗穎さんの親戚が住んでいます。代麗穎さんが伝統的なムークーロンについて説明してくれました。
「今のムークーロンは外側を磨いてニスを塗ったりして、見た目を重視していますが、伝統的なものは磨きません。釘を一本も使わないムークーロンは夏は涼しく、冬は暖かいんですよ」
そしてここにはロシアの食文化も脈々と受け継がれて来ました。ロシアの独特なパン・フリェープやロシア風ピクルス、キャビアの塩漬け、ワインを味わうことが出来ます。
「ナジの家」を出ると、向かいに一軒の小屋があります。表には「釜焼きフリェープ」の看板がかかっています。ロシアパンのお店のようです。入ってみると、バターの香りがするお馴染みのパンとは違った香りがしてきました。
棚には、焼きあがったパンと、焼かれるのを待つパンが並べられています。
釜から出したばかりのパンを観光客たちは美味しそうにほおばっています。
この店は、昔ながらの伝統的な方法でロシアパンを作っています。即席品になれた現在人にはこの昔ながらの味のパンがかえって人気のようです……(任春生)
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