中国中部に位置する湖南省の山の中に、2000年の歴史を持つ旧い町があります。それは自然に恵まれた土地、芙蓉鎮です。大自然の中、少数民族トゥチャ族が暮らしています。
1980年代、中国の映画、「芙蓉鎮」は国内だけではなく、世界的にも有名になりました。この映画を観た人たちの心には、映画のロケ地、湖南省西部、永順県王村という名前が刻みつけられました。国の行政区区画と地図上には、まだ王村と書かれていますが、実はこれが芙蓉鎮の正式な名前です。中国の人々は、王村の名前を忘れ、いつしかここを芙蓉鎮と呼ぶようになりました。一本の映画がこの町の運命を変えたのです。
芙蓉鎮には、四川省と貴州省、そして湖南省の洞庭湖という湖をつなぐ川、酉水があります。交通が便利なこともあり、およそ1000年前から芙蓉鎮は商業が栄え発展した町でした。
芙蓉鎮の中心を貫くのは五里石畳街と呼ばれる大通りです。この通りの両側に木造の2階から3階建ての民家が立ち並んでいます。この民家の中には店を営むものもあり、店の前には1メートルほどの高さの台が置かれています。まるでカウンターのようです。この台は湿気を防ぐ効果があるほか、その昔は馬に乗っていたお客さんが馬から降りずに買い物をするのに使われていたそうです。
石畳の道を歩き芙蓉鎮ならではの風景と雰囲気を楽しみます。朝、白く薄い霧が酉水という川の水面から立ち上り、町はしっとりとした空気に包まれています。石畳、トゥチャ族の独特な民家、彫刻レンガで装飾された壁は霧の中に隠れたりまた現れたりして神秘的な様子をかもし出しています。
日が暮れて、町は夕日を浴びて、金色に輝いています。家のかまどから細い煙が空へ昇っていくのが見えます。まるで水墨画の中に迷い込んだようです。
1980年代、中国の著名な映画監督、謝晋は映画「芙蓉鎮」を撮影するため、全国でロケ地を探していました。そして最後に、王村に出会ったのです。次の音声は、亡くなった謝晋監督が数年前テレビ番組に出演し、映画「芙蓉鎮」のロケ地に王村を選んだ理由について語ったものです。
「ロケ地を探して、いろいろなところを回りました。船に乗ってここまで来て、船をおりて長い階段を上って町に入りました。王村は、本当にいい場所です。ここは重慶の町とよく似ています。すぐに気に入って、スタッフに『ここがいいんじゃないか』と言いました。町の中のトゥチャ族の独特な民家がありますが、これほど大きな建物は初めて見たので、驚きました」(謝晋監督)
芙蓉鎮には湘西民俗博物館があります。収蔵された宝物は渓州銅製柱です。これは全国で初めて認定された重点保護文化財の一つです。この柱の重さは2500キロ、表面には2500の文字が刻まれ、トゥチャ族の歴史を記録しています……(担当:任春生)
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