労災補償について、当事者間の示談書は有効であるか?
『事件の経緯』
2008年3月、A社の工場で事故が起き、従業員である張さんは右手に重傷を負った。A社は張さんに、「労災鑑定及び負傷等級鑑定手続きは非常に煩雑であり、通常の方法を通じて補償金を取得するには相当長い時間がかかってしまうが、会社は一括で補償金2万元を支払うことができる」と話し、示談書を締結するよう説得した。最終的に、張さんはA社からの労災補償示談案を受け入れ、労災鑑定及び負傷等級鑑定を行わず、A社と包括的労災補償示談書を締結し、A社に包括補償金以外の労災補償を要求しないことを承諾した。
半年後、張さんはたまたま別件で労働保障部門に問い合わせる機会があり、その際に、労働者は自ら労災鑑定を申請し、労災補償を享受することができることを知った。そこで、張さんは労災鑑定を受け、労働仲裁を提起し、A社に対して法律に従って労災補償を提供するよう請求した。仲裁委員会は審理を経て、A社と張さん間の包括的補償示談書は無効だと判断し、張さんの仲裁請求を認めた。A社は、従業員は会社とすでに示談書で労災補償方式を約定したにもかかわらず、なぜ示談書に反して労災補償を要求することができるのか、と疑問に思った。
『解説』
実際のところ、多くの会社はよく、『労働争議調停仲裁法』の規定に基づき、会社と労働者は協議により労災補償の問題を解決することができると考え、多くの労働者はよく、労災鑑定及び補償金の申請は非常に面倒だと思い、できる限り早く補償金を取得するために、会社と包括的補償示談書を締結することに同意することがある。
通常、『労働契約法』などの関連法律によると、会社と労働者間の補償示談書は有効であると考えられる。しかし、司法実務において、労災補償示談書が無効と判断される裁判例は少なくない。理由は、司法機関が「会社が労災事故にあった従業員に労災補償を与える義務から逃れるため、示談書における補償金額が『労災保険条例』における補償金基準を著しく下回っている」と認定した場合、当該示談書は明らかに不公平であるため無効となり、会社に対して法律に従って従業員に労災補償を与えるよう判断するからである。
したがって、会社が労災補償を処理する場合、慎重に考えた上で「示談書」の方式を採用したほうがよいと思われる。包括的補償示談書を締結する必要性がある場合、労災鑑定及び負傷等級鑑定の結果に基づき、工会が参与した上で締結することができる。又、示談書の合法性及び実効性をより一層確保するために、協議書を締結する前に労働主管部門の意見を伺い、又は公証機関で公証を受けた上で示談書を締結する方法も考えられる。
以上はリチャード法律事務所(上海本部)の陳文偉弁護士(E-mail:wenweichen@rwlawyers.com )により提供されたものです。
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