自分の一存で、自分の姓名を自由に決めることはできるのか?
『事件の経緯』
2006 年、趙Cさんが派出所にて第二版身分証明書の発行を申し立てた際、警察から「『公安部関与起用新的常住人口登記表和居民戸口簿有関事項的通知』に基づくと、姓名には『C』という文字を使用することができないため、姓名を変更してください」と要求された。趙Cさんは、この姓名を20 年以上も使用しており、且つ戸籍及び第一版身分証明書はこの姓名で登録されており、他の保存書類の「氏名」欄にも「趙C」と記載されていた。そのため、もし姓名を変更すれば、他の関連記録も変更しなければならず、非常に面倒な上に費用もかかることとなり、又、個人的にも自分の姓名が好きであったため、変更したくないと思った。そこで、趙Cさんは民法通則における「公民の姓名権」に基づいて訴訟を提起した。
裁判所の法廷調停を通じて当事者双方による和解が成立し、警察局は無料で趙Cさんの姓名変更手続を行うこととなった。
実は、このような事例は他にもあり、2009 年、山東省のとある古代文学愛好家の呂さんは、娘に名前を付ける際に、「詩経」などの古代詩歌に基づいて、自分の姓とも奥さんの姓とも異なる姓をつけ、フルネームを「北雁曇依」とした。しかし、娘の戸籍登記を行う際に、派出所は「山東省の地方規定に適合しない。子供の姓は父、もしくは母の姓のいずれかに一致しなければならない。」という理由を以って呂さんの戸籍登記申立てを拒否した。
『解説』
元々、中国の法律は公民に姓名の決定権を与えており、『民法通則』は、「公民は姓名権を有し、自分の姓名を決定、使用及び規定に従って変更することができる。」と規定している。姓名の構成について、『婚姻法』では、「子供の姓は、父親、母親のいずれかの姓を選択することができる。」と規定している。『居民身分証明書法』は、「居民身分証明書は、規範漢字及び国家基準に適合する数字、符合で記入しなければならない。」と規定している。又、2007 年に公安部は上述の法律規定の原則に基づき、姓名の構成の規範を詳細にするために、『姓名登記条例(初稿)』を起草し、「居民の姓は父、もしくは母の姓のいずれかに一致しなければならず、非少数民族の居民の姓名には、適用されている簡体字に対応する繁体字、すでに使用されていない異体字、自分で創造した字、外国文字、漢字の表音文字、アラビア数字、符合などの文字を使用することはできず、一般的に、姓名は、二文字から六文字にしなければならない」、と規定した。当該条例はまだ正式に公布されていないが、各地の公安機構は、実務上すでに当該条例を参照しており、さらに一部の公安機構では当該条例の内容を参照した上で地方法規又は規範を制定し、これに従って執行しなければならないと要求している。
よって、2007 年以前は、中国の法律における公民の姓名に関する規定は細部が不明確であったため、趙Cさんの事案と類似する事案が生じたわけである。2007 年以降、中国の法律における公民の姓名に関する規定は一層詳細且つ厳格になっている。
姓名は、全ての人にとって最も重要なものであるが、姓名は自分の代名詞であるとともに、他人が使用する重要な名称でもある。過度に個性的な姓名を使用すれば、法的手続を行う際に支障が生じる可能性があり、且つ実際の使用において不便なところが多々ある。例えば、銀行口座の申請ができない、航空券の予約ができないなどである。よって、公民は、自分が気に入った姓名を使用する権利を有するが、姓名をスムーズに使用するためには、関連の規定及び要求を遵守しなければならない、と考えられる。ただし、公民が筆名、芸名、仮名を決定する場合は上述の制限を受けないとされている。
以上はリチャード法律事務所(上海本部)の陳文偉弁護士(E-mail:wenweichen@rwlawyers.com )により提供されたものです。
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