契約用語に要注意、曖昧な内容は禁忌
『事件の経緯』
甲社は、事務所用に不動産の購入を計画し、乙社と協議した上で、795万元で乙社が所有する分譲不動産を購入することについて合意した。甲社の定款には、「800万元以上の契約書の締結は、董事会の決議により可決しなければならない」、と規定しているため、甲社は乙社と協議し、「795万元は土地代金の全額であり、不動産取引及び譲渡過程で生じた全ての費用は、乙社が負担する」と約定するよう要請した。これに基づき、当事者双方は不動産売買契約書の中に「不動産の所有権譲渡にかかる費用は、乙社が負担する。」と約定した。
しかしながら、譲渡過程において、乙社は、「不動産譲渡にかかる契約税及び印紙税の納付は甲社の義務であるため、乙社自身は直接納付することができず、且つ関連費用は、帳簿に記録することもできない」ということを理由として、24万元余りの税金の納付を断った。甲は仕方なく、訴訟を提起して乙社に税金の納付及び不動産の譲渡を行うよう請求した。
裁判所は、審理を経て、以下のように判断した。
不動産売買契約書には「不動産譲渡にかかる『費用』は、乙社により負担する」と約定しているが、「不動産譲渡にかかる『税金』は、乙社により負担する」とは約定していなかった。不動産の譲渡には、所有者の名義書換えの費用、印紙税、及び契約税などの税金がかかる。税金の徴収原則及び取引慣例によると、甲社が不動産の購入者として以上の税金を納付するのが合理的であるため、最終的に、甲社に24万元余りの税金を負担するよう判決を下した。
当該判決により、契約金額が800万元を超えたため、甲社は董事会を通じて当該契約書の効力を可決しなければならなくなった。
『分析』
税金徴収管理の関連法律には「納税者は、法律、行政法規に規定されている納税義務を負う組織及び個人でなければならない」、と明確に規定している。例えば、「中華人民共和国契約税暫定条例」には、「中華人民共和国国内において、土地、不動産関連の権利を譲渡する場合、譲受人である組織又は個人を納税者とする」と明確に規定している。よって、法律法規に明確な規定があり、且つ当事者双方が税金の負担について明確に約定していない場合、裁判所が「税金は『譲渡にかかる費用』とは別のものである」と判断するのは、法律上一定の根拠を有すると考えられる。
実のところ、法律は、「費用の納付義務者」の範囲のみを規定しており、「費用の納付負担者」の範囲は規定していない。すなわち、経済活動において、「費用の納付義務者」とは法定の費用の納付義務者であり、「費用の納付負担者」とは実際に当該費用を納付する当事者である。そのため、当事者双方は約定を以って「費用の納付負担者」を決定することができるが、このような費用の納付の代行は、以下の二つの問題点とかかわっているので、ご注意いただきたい。
①費用の項目を明確に約定しなければならない。
例えば、契約税、印紙税又は個人所得税などを明確に確定する。
②費用の負担方式をできる限り明確に規定しなければならない。
例えば、以下のように約定することができる。「費用の納付負担者」が先に「費用の納付義務者」に関連費用を支払い、約定の費用負担についての契約書及び「費用の納付義務者」が発行した領収書を以って帳簿に記載する。「費用の納付義務者」は関連部門に関連費用を納付し、関連証明書を取得した後に、これらの証明資料のコピーに公印を捺印した上で、「費用の納付負担者」に交付し、「費用の納付負担者」は、上記の証明書を以って帳簿に当該費用の償却に用いることができる。
以上はリチャード法律事務所(上海本部)の陳文偉弁護士(E-mail:wenweichen@rwlawyers.com )により提供されたものです。
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