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中国における契約上の手付金についての判例

2009-12-18 13:30:40     cri    

~中国における契約上の手付金についての判例~

 【事件の経緯】

 A社は機械の部品を生産する外資企業である。2007年5月、B社はA社にある機械の部品を発注した。発注契約の総金額は200万ドル、手付金は50万ドルであり、2007年10月に一括で部品を引き渡すことを約定した。且つ契約締結後にB社はA社に50万ドルを手付金として支払った。

 しかし、A社の仕入先での問題が原因となって、A社は期日通りに部品を納入することができなかった。B社は、A社が期日通りに契約を履行しなかったことを指摘して、A社に対し手付金の倍額の100万ドルを請求した。これに対しA社は「仕入れ先に原因があったのだから、納期を延期してほしい」と求めた。そこでB社はA社を相手取り裁判所に訴えを提起した。

 【判決】

 裁判所は、双方の手付金に関する取り決めが法律上適法に成立していることを認定した。但し手付金の金額については「約定した金額は法定の限度額より高い。よって超過部分を無効とする」と判断した上で、「A社はB社に80万ドルの金額を支払え」との判決を下した。

 【解説】

 1、『中華人民共和国担保法』(以下『担保法』という)第89条に「当事者の一方は、相手方に対し手付金を支払い、以って債権の担保とすることができる。債務者の債務履行後、手付金は代金と相殺され、又は返還されるものとする。手付金を支払う当事者は、約定の債務を履行しない場合、手付金返還請求権を有しない。手付金を受け取った当事者は、約定の債務を履行しない場合、手付金額の2倍を返還しなければならない」と定められている。

 中国において手付金は担保制度の一つであり、一般に主契約の履行の担保として幅広く用いられている。

 2、『担保法』第90条に「手付金は書面の形式で約定しなければならない。当事者は手付金の約定において手付金の支払期限を約定しなければならない。手付金に関する契約は、実際に手付金を支払った日より効力を生じる。」と定められている。

 本件を見ると、A社とB社は書面の契約書において手付金について約定した。且つB社は契約締結後、実際に手付金を支払った。これにより、裁判所は「手付金契約が成立し効力を生じた」ものと認め、手付金に関する上述担保法などの法令を適用すべきと判断した。

 3、『担保法』第91条に「手付金の金額は当事者の約定により取り決める。但し主契約の目的物の金額の20%を超えてはならない」と定められている。

 また、『「担保法」適用に関する若干問題の最高人民裁判所解釈』(以下『裁判所解釈』という)第121条に「当事者の約定した手付金金額が主契約の目的物の金額の20%を超える場合、超過部分について、人民裁判所はこれを支持しない」と定められている。

 本件の主契約の目的物の金額は200万ドルなので、その20%、即ち40万ドルを手付金の限度額とすべきである。だが、本件の手付金(50万ドル)は法定限度額より高いので、裁判所は超過部分を認めず、手付金として有効な金額は40万ドルである、と認定された。

 【コメント】

 1、手付金は商事契約でよく利用される法的手段であり、契約の有効な履行促進や、契約当事者の権益保護を図る役割を担っています。このような便利な面がある一方、手付金にまつわる各種の規則をうまく運用できなかった場合、思わぬ損失を被る可能性もあります。そこで、手付金契約を取り決める際の注意点について、下記のようにコメントいたします。

 2、当事者が債務を履行しない場合には、手付金に関する罰則に従って処罰を受けなければなりません。

 3、手付金に関する罰則の適用には強行性があります。このため、当事者が手付金の方式を選択した場合は即座に関連罰則の拘束を受けることになります。よって、手付金の取り決めの際は慎重に検討し、その後の履行過程においても十分注意を払う必要があります。

 4、本件のA社のように、履行不能の原因が仕入先(第三者)にあったとしても、まず当事者が手付けに関する違約責任を負担し、その後でなければ、第三者に対する責任追及はできません。

 5、『裁判所解釈』第118条に「当事者が留置金、担保金、保証金、締約金、敷金などを支払った場合であっても、これらにつき手付金としての性質を約定していない場合は、人民裁判所は、当事者が手付金の権利を主張しても、これを支持しない」と定められています。

 すなわち、当事者がなんらかの金銭を支払い、「その金銭は手付金の性質を有する」との約定を行わなかった場合、例え当事者が「手付金と同じような権利がある」と主張しても、裁判所は認めてくれません。

 以上、ご参考にしていただければと思います。

 以上は上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)の張福剛弁護士(E-mail:fugang.zhang@kyodo-lf.comにより提供されたものです。

 提携機構:上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)

 ウェブサイト:http://www.kyodo-lf.com/

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