企業運営では、罰則の無い規定にも注意すべきである

『事件の経緯』
2009 年3 月、上海にある外商独資企業は、人員削減を行うために「労働契約法」第41 条に従って労働行政部門に申請を提出した。しかし、労働行政部門は、申請資料に「工会法人資格証書」のコピー、又は従業員全体により選挙で選出された従業員代表の証明資料が必要であるとして、当該人員削減案を拒否した。資料を補充する過程において、当該企業では、工会組織を設立しておらず、従業員代表も設けていなかったため、人員削減のために従業員全体に従業員代表を選出するよう要求したが、大部分の従業員は反抗し、協力しなかった。よって、当該企業の人員削減計画は、労働行政部門による許可を得ることができず、効率的に行うことができなくなってしまった。
『分析』
上海労働行政部門は、「上海市人力資源和社会保障局関与用人単位依法実施裁減人員報告的通知」(滬人社関発[2009]3 号)における「雇用者は、人員削減方案を提出する際に、『企業営業許可書(副本)』及び『工会法人資格証書』のコピーを提出しなければならず、工会組織を設立していない企業は、従業員全体により選挙で選出された従業員代表の証明資料などの書類を提出しなければならない。」という規定に基づいて、当該企業の人員削減計画申請を認可しないことにした。「工会法」及び関連法律法規によると、企業は工会組織を設立しなければならない、という強制的な義務は無い。また、「会社法」及び関連法律法規にも、外商独資企業の董事会構成員には、従業員代表を入れなければならないという強制的な義務は無く、監事会構成員には、一定比率の従業員代表を含まなければならないとは規定しているが、従業員代表者を設けない場合の罰則は規定していない。当該企業の場合は、企業にとって都合が良いとして、工会を設立せず、従業員代表も設けていなかったため、人員削減計画を順調に進めることができなくなってしまったが、もし企業が事前に関連義務をきちんと履行していれば、以上の結果を避けることはできたと思われる。
中国の法律は、企業の経営における義務について比較的網羅的に規定しているが、一部の義務についての罰則を明確に規定していないため、多くの企業は、当該部分の義務又は関連手続の履行を怠りがちである。しかし、政府部門は法律執行の過程において、一連の政策(例えば、上述の政府書簡など)、又は実際の執行ルール(ある地方政府部門が企業の土地譲渡申請を受理する際に、企業の納税完了状況も確認するなどのルール)に従って、企業の関連義務の履行についての管理を強化している。よって、企業は法律に規定されている義務及び手続を適時に履行・完了しなければならない。さもなければ、上述の事案のように、企業が関連業務を行う際に、様々な実務上の問題点が突如現れ、対応が間に合わなくなってしまう恐れがあると思われる。
以上はリチャード法律事務所(上海本部)の陳文偉弁護士(E-mail:wenweichen@rwlawyers.com )により提供されたものです。
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