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中国における製品の欠陥責任についての判例

2009-11-23 16:00:27     cri    

~中国における製品の欠陥責任についての判例~

 【事件の経緯】

 上海在住のA氏は2007年5月、電気製品量販店B社で、北京に本社を置く外資企業C社の生産したプリンターを一台購入した。半年ぐらい経って、突然プリンターの使用中に火災が発生しA氏のオフィス、事務用品などが損壊した。

 鑑定によると、原因はそのプリンターが製造された時点で欠陥が存在していたためであった。

 A氏はB社に対し、財産上の損害賠償と精神的な損害賠償として合計20万元を請求した。B社はこれに対し、自己の責任ではないからC社に賠償請求すべきであると主張した。A氏は、C社が北京にあり、交渉・訴訟など不便なので、B社への賠償請求を堅持した。

 双方は協議したが結論に至らず、A氏はB社に対し裁判所に訴えを提起した。

 【判決】

 裁判所は、事実と証拠につき調査確認を経て、「プリンターの売買契約は有効に成立し、且つ火災の原因は、鑑定によりB社が販売したC社製プリンターであることが確かなので、B社は賠償責任を負うべきである」と認定し、A氏の主張を支持した。

 【解説】

 『中華人民共和国製品品質法』(以下『品質法』という)第43条には、「製品に欠陥が存在したことが原因で、人身及び他人の財産に損害をもたらした場合、被害者は製品の生産者に賠償を請求でき、製品の販売者にも賠償を請求できる。生産者に責任が帰属し販売者が賠償した場合、販売者は生産者に求償する権利を有する。販売者に責任が帰属し生産者が賠償した場合、生産者は販売者に求償する権利を有する。」と定められている。

 本規定により、製品の欠陥により他人の財産が損害を受けた場合、被害者は生産者または販売者を選択して賠償を求める権利がある。そのため本件訴訟においては、A氏は、B社かC社のいずれか、又はB社とC社を共同被告として選択し、訴訟相手方とすることができる。

 また、製品の欠陥が生産者(即ちC社)の責任に属するので、B社がA氏に賠償した場合、B社からC社へ求償権がある。

 【コメント】

 中国法律上、製品の品質責任は特殊な民事責任であり、『品質法』『中華人民共和国契約法』などに定めがあります。ご参考として中国の品質責任につきいくつか簡単に紹介いたします。

 ・ 「製品に欠陥が存在したことにより発生した損害は、その賠償請求の訴訟時効期間は二年とする。当事者がその権利侵害を受けたことを知ったとき又は知るべき時から起算する。(『品質法』第45条前段)

 ・ 「製品に欠陥が存在したことにより発生した損害の賠償請求権は、損害の生じた欠陥製品が最初の消費者に引き渡されてから満十年で喪失する。但し、明示された安全使用期間が未経過の場合を除く」(『品質法』第45条後段)

 ・ 「製品に欠陥が存在したことにより、人身及び欠陥製品以外のほかの財産に損害が発生した場合、生産者は賠償責任を負わなければならない。生産者は、下記のいずれかに該当している旨を証明することができる場合、賠償責任を負わない。

 ① 製品をまだ流通過程に出していない。

 ② 製品を流通過程に出した時、損害を招いた欠陥がまだ存在していなかった。

 ③ 製品を流通過程に出した時点の科学技術レベルで、欠陥の存在を発見できない。」(『品質法』第41条)

 ・ 「販売者の過失により製品に欠陥が存在し、人身及び他人の財産に損害をもたらした場合、販売者は賠償責任を負わなければならない。販売者が欠陥製品の生産者を明らかに示すことができず、且つ欠陥製品の供給者を明らかに示すこともできない場合、販売者は賠償責任を負わなければならない。」(『品質法』第42条)

 ・ 「販売した製品が下記のいずれかの情況に該当する場合、販売者は修理、交換、返品の責任を負わなければならない。製品を購入した消費者に損失をもたらした場合、販売者は損失を賠償しなければならない。

 ① 製品にあるべき使用機能が備わっていないのに、事前に説明しなかった場合。

 ② その製品について採用された製品基準が、製品上または包装上の明記と合致していない場合。

 ③ 製品説明、実物見本などの方式で表明された品質状況と合致していない場合。

 (『品質法』第40条第1項)

 ・ 販売者は第40条第1項の規定により修理、交換、返品、損害賠償を行った後、責任の帰属が生産者又は販売者に製品提供した他の販売者(供給者)にある場合、販売者は生産者、供給者に求償する権利を有する。

 販売者が第1項の規定により修理、交換、返品又は損害賠償を行わない場合、製品品質監督部門又は工商行政管理部門は是正を命じる。生産者間、販売者間、生産者と販売者との間で締結した売買契約、加工契約に別途約定がある場合、契約当事者はその約定に従うものとする」(『品質法』第40条第2項)

 製造業者の場合、契約の約定を工夫したり、必要に応じて上述に挙げたような法令上の規定をうまく利用する等、自己のビジネススタイルや目的物の性質に応じて、自社のリスク回避をご検討されるとよいでしょう。以上、ご参考になれば幸甚です。

 以上は上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)の張福剛弁護士(E-mail:fugang.zhang@kyodo-lf.comにより提供されたものです。

 提携機構:上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)

 ウェブサイト:http://www.kyodo-lf.com/

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